プロセス発見技法の基礎

The Basics of Process Discovery Methods from BPM point of view.

今回は、BPM(Business Process Management)の視点から、「プロセス発見技法」について包括的な解説を行います。したがって、当記事における「プロセス発見技法」には、プロセスマイニングによる、イベントログに基づくプロセス発見(ABPD: Automated Business Process Discovery)だけでなく、従来の手法も含まれます。

プロセス発見の定義

プロセス発見は、現在のプロセス、すなわち現在の業務手順とそれを遂行する組織体制についての情報を収集し、それを現状プロセスモデル(as is processs model)として描くことです。

ここで、プロセスモデルとは、現実に起きている業務手順を模したものです。粒度粗く、ざっくりと描いたり、できるだけ詳細に描いたり、目的によって再現度合いは異なります。しかし、あくまでリアルな現状に似せたものであるという点をご理解ください。(例えば、戦艦のプラモデルは、実際の戦艦に可能な限り忠実に製造されていますが、縮尺も違いますし、プラモデルとして再現するため、一部省略されている箇所があったりします。)


プロセス発見の課題

プロセス発見に取り組む上で一般に以下の3つの課題があります。これらは、対象とする業務プロセスに関わる人々の認知(ものごとに対する知識や理解、判断のあり方)の制約がもたらすものです。

1 プロセスに対する断片的な知識しか存在しない

現在の企業・組織の業務プロセスの多くは、複数の部署にまたがる長く、複雑なタスクの集合体です。各タスクにはそれぞれなんらかな専門知識やスキル、経験が要求されますし、部署も異なることから、調達プロセスにしろ、受注プロセスにしろ、数十人から、大企業なら数百人が分担してプロセスを回しているのが現実です。

したがってエンド・ツー・エンド(調達プロセスなら、購買要求申請から発注、納品を経て、請求書への支払いが完了するまで)での一連のプロセスを発見するためには、多数の関係者からそれぞれが持つ断片的な情報を集め、組み立てなおす必要があります。


2 現場の担当者は俯瞰的にプロセスを捉えていない

プロセスを構成する様々なタスクを遂行する各担当者は、与えられた役割、責務のなかで日々、業務をこなすことに注力しています。例えば、購買部の担当者は、各部署から上がってくる購買申請を一件一件、内容に不備がないか確認し、不備がなければ次の工程に回し、不備があれば差し戻す、というように、案件単位で業務を行っています。

したがって、現場担当者は、「どのように業務を行っていますか」という質問には簡単に答えることができますが、多くの場合、自分が行っている業務手順がおおよそ何パターンくらいあり、それがどのような条件で分岐していくのか、といった俯瞰的な見方をしたことがないため、漏れなく業務手順を語ることは苦手です。現場担当者が業務を一番理解しているはず、というのは必ずしも真実ではなく、一般化して説明できるほど包括的に理解しているわけではないのです。


3 現場担当者はプロセスモデリングに長けていない

プロセス発見では、「BPMN(Business Process Modeling and Notation)」などの表記法を用いて、業務手順を示したフローチャートを作成するのがゴールです。このフローチャートを作成することを「プロセスモデリング(プロセスマッピングとも言う場合がある)」と呼びます。

プロセスモデリングで描かれたフローチャートはBPMN以外にもいろいろとありますが、比較的素人でも理解しやすいとはいえ、複雑なものになると、ある程度の知識や経験がないと読み解くのが難しくなります。当然ながら、プロセスモデリングの能力を持つのは、プロセスアナリストなどの専門職であり、一般のビジネスパーソンはBPMNの言葉さえ知らない人がほとんどでしょう。

さて、対象プロセスについて現場担当者にヒアリングした後、プロセスアナリストがBPMN形式のプロセスモデルを作成したら、そのプロセスモデルが現状を適切に反映しているかを現場担当者に確認する必要があります。ここで、BPMNに慣れていない現場担当者としては、そもそもプロセスモデルを理解するのに苦労するというわけです。


プロセス発見技法

プロセスモデルを作成する対象となる業務プロセスについての情報を集める方法としては大きくは3つあります。

1 根拠に基づく発見 - Evidence-Based Discovery

ー 書類分析:

対象プロセスのマニュアルや要件定義書などの関連書類から、業務の流れに関わる情報を拾います。

ー 観察調査:

現場担当者が実際に業務を行っているところに立ち会って逐次記録したり(シャドウイング)、動画に収めて後日分析を行います。

ー プロセスマイニング(ABPD: Automated Business Process Discovery):

対象プロセスがERP、CRMなど業務システム上で実行されている場合、当該システムからイベントログ(トランザクションデータ)を抽出し、プロセスマイニングツールにより、自動的にプロセスモデルを作成します。


2 ヒアリングに基づく発見 - Interview-Based Discovery

文字通り、現場担当者に時間を作ってもらい、ヒアリング(英語ではInterviewと呼ぶことが一般的)を行って業務の流れについての情報を収集します。

ここで、前項のプロセス発見の3つの課題をできるだけ克服できるよう、ヒアリングを行うプロセスアナリストは、優れたインタビュースキル、コミュニケーションスキルを有していることが求められます。


3 ワークショップに基づく発見 – Workshop-Based Discovery

ワークショップでは、1対1のヒアリングと異なり、対象プロセスに関与する複数の部署から多くの現場担当者が一堂に会し、付箋紙などを用いながら、その場で業務フローを簡易的に描いていきます。

一連のプロセスの前工程、後工程の各担当者が自分の担当タスクを説明しつつ、前後の担当者と議論をしながらプロセスの流れを明らかにしていくことができるワークショップでは、プロセス発見の3つの課題のうち、断片的な知識を補うことができますし、俯瞰的なプロセス理解もある程度深めることが可能です。

また、ワークショップに担当役員や社長が同席する場合もあります。これは、プロセス改善の取り組みが全社的である場合、会社としての本気度を示し、関係者のモチベーションを高めることに意義があります。

ただし、ワークショップは関係者一同を集め、長時間拘束する必要があることから、日程調整に骨が折れるという問題があります。


各手法の違い

前項の3つのプロセス発見技法の特徴の違いについて見てみましょう。

比較する視点としては、「客観性」、「情報の豊富さ」、「所要時間」、「フィードバックの速さ」の4つです。

comparison three process discovery methods
出所:Fundamentals of Business Process Management

客観性の視点では、エビデンスベース、すなわち関連書類や、観察調査、プロセスマイニングが優れています。ヒアリング、ワークショップは、基本的に現場担当者の「記憶」を引き出しているだけ、ということですから、主観的な要素が大きくなります。

情報の豊富さ、という視点では、現場担当者から詳細な情報を引き出せるヒアリングやワークショップが優れています。

所要時間としては、現場担当者にあまり負担をかけることのないエビデンスベースが優れています。ヒアリングやワークショップは、日程調整が大変ですし、現場担当者にそのための時間を割いてもらわなければなりません。

フィードバックの速さというのは、その場で聞き直したり確認が行えることを意味しています。これはヒアリングやワークショップが当然ながら優れています。

プロセスマイニング活用を前提としたプロセス発見の基本手順

最後に、対象となる業務プロセスがERPなどの業務システム上で大半が実行されており、プロセスマイニング活用が有効である場合のプロセス発見の基本手順を解説します。

1.書類分析

まず、分析対象となる業務プロセスに関する書類(マニュアル、要件定義書など)が存在しているかどうかを確認し、できるだけ多く収集します。もし、書類の中に、標準的な業務手順のフロー図があれば、それは「標準プロセス(to beプロセス)」として、適合性検査に役立てることができます。

2.プロセスマイニング

プロセスマイニングを実行するにあたっては、対象プロセスのイベントログをITシステムから抽出すると同時に、対象プロセスの概要を理解するための基本的な情報、すなわち、おおよその処理件数(月当たり、週当たりなど)、おおよその平均処理時間(スループット、サイクルタイム)、担当部署などについて、最低限ヒアリングする必要があります。「プロセスセットアップ」と呼ばれる作業ですが、これはおおむね短時間で済みます。

3.ワークショップ

プロセスマイニングによって自動的に再現されたプロセスフローチャートを検証し、特定された非効率な箇所、ボトルネックなどの原因を探るために、関係者を集めてワークショップを開催することが効果的です。

プロセスマイニング活用を含むプロセス発見においては、ワークショップの場はプロセスを発見するだけでなく、問題の根本原因を追及していく機会にもなります。

4.ヒアリング

ワークショップの開催が難しい場合、対象プロセスに関わる現場担当者のうち、キーパーソンや、また非効率な箇所、ボトルネックに関与している担当者と個別ヒアリングの場を設定することも有効です。

留意していただきたいのは、ここでもプロセスを発見することではなく、特定された問題の根本原因を明らかにすることに重点が置かれること、また個人の責任を問うたり責める場ではないことです。


以上の流れはあくまで標準的なものであり、プロジェクトの期間や予算、体制などを考慮して柔軟な進め方を行いましょう。

なお、プロセス発見の詳細解説は、以下の参考図書をお読みください。

『Fundamentals of Business Process Management』(Marlon DUまs、Marcello La Rosa, Jan Mendling, Hajo A. Reijers, Springer)

ビジネスプロセス治療法

how to cure bad process

How to cure a process with problems
English follows Japanese. Before proofread.

今回は、プロセスマイニングを活用して、ビジネスプロセスを改善する流れを病院での治療の手順と対照させながら説明します。

プロセスマイニングは、イベントログデータから、見えなかったビジネスプロセスを可視化することで、プロセスに潜む様々な課題・問題を発見することを目的としています。

この「プロセスを可視化する」という点から、プロセスマイニングはしばしばX-ray、すなわちレントゲンに例えられます。ただ、病気の治療と同様、病巣(課題・問題)を発見して終わりではなく、適切な治療(改善施策)を施し、健康な状態に戻す、すなわち改善された「理想プロセス」を実現することが最終目的です。

では、まず病院における医療活動の流れを概説しましょう。大きくは、「診断ステージ」と「治療ステージ」の2段階に分けています。


医療活動

診断ステージ

患 者

発熱、咳などなんらかの症状を抱えた患者の来院が治療の起点となります。

問 診

まずは、現在の症状の程度などについて質問し問診を行います。

レントゲン

X-ray機器を用いて、病巣が存在すると思われる箇所を撮影します。

レントゲン写真

X-ray写真を見ながら、病巣の有無を確認します。

診 断

X-ray写真の結果から、どのような病気に罹患しているか判断します。

身体診査

さらに、さまざまな検査を行い、上記診断結果が正しいかを検証します。


治療ステージ

治療方針

診断結果に基づき、また患者の意向も踏まえて治療方針を行います。たとえば、外科手術を実施するか、薬物治療をどのように行うか、などについてです。

手 術

病巣を除去するほうが良い場合、手術を行います。

医薬品

医薬品だけ、また手術と併せて医薬品を投与して治療を行います。

治 癒

病因が除去され、症状がなくなりました。治療完了です。


次に、上記病院での診断・治療の流れに沿って、ビジネスプロセス改善の手順を概説します。


ビジネスプロセス改善

現状把握 - 診断ステージ

問題プロセス - 患者

スループットが長い、運営コストが高い、顧客からの苦情が寄せられている、など、なんらかの現象としての問題が発生しているプロセスを改善すべき対象として選択します。

プロセスセットアップ - 問診

プロセスの概要、処理件数、担当部署・担当者など、改善対象プロセスに関わる基本情報を主にインタビューを通じて整理します。プロセスに関わるシステムの仕様書やマニュアルなどがあれば、それらも併せて内容を確認します。

プロセスマイニング - X-ray(レントゲン)

改善対象プロセスのイベントログデータを元にプロセスマイニングツールを用いて分析を行い、現状プロセスのフローチャートを作成します。

現状プロセス - X-ray写真(レントゲン写真)

現状プロセスについて、頻度別、所要時間別など様々な切り口での分析を行います。

問題・課題発見 - 診断

上記分析結果から、現象としての問題・課題を引き起こしている箇所、すなわち、時間がかかりすぎている非効率な手順や、待ち案件が積みあがっているボトルネックなどを特定します。

現場インタビュー・観察 - 身体診査

特定した問題箇所について、現場の担当者に対するインタビューや観察調査などを行い、根本原因の究明を図ります。

プロセスの非効率性やボトルネックを発生させている根本原因としては、あまり意味のない手順が多い、ミスが多く、やり直しをするケースが多い、処理すべき案件にたいしてアサインされている担当者数が少ない、などがあります。


改善活動 - 治療ステージ

改善方針 - 治療方針

プロセスに関わる様々な問題・課題、それらを引き起こしている根本原因が判明したら、改善施策を立案します。

大きな改善方針としてはまず、スループットを短縮する、コストを削減する、顧客満足度を向上する、など目的を明確化することが重要です。

改善施策実行 - 手術・医薬品

改善施策には大掛かりなものからちょっとした修正まで様々な選択肢がありえます。

ゼロベースでプロセスを組みなおすようなBPR(Business Process Re-engineering)は、外科手術にたとえることができるでしょう。マニュアルの業務をRPAのソフトウェアロボットに代替するのは、人工心臓に取り換えるようなものと言えるかもしれません。

ちょっとした手順の変更を行うだけで所要時間が改善できるとしたら、それはシンプルな薬物療法で治療できる病気だったとなるでしょう。

改善プロセス ー 治癒

有効な改善施策を展開した結果、望ましいプロセスが実現できたらひとまずプロジェクト完了です。


病気の治療において、定期検診が必要なように、問題が再発しないか、新たな問題が発生しないか、継続的に対象プロセスを監視することが必要です。


How to cure a process with problems

In this article, I’ll explain the flow of using process mining to improve business processes, contrasting it with the procedure of treatment in a hospital.

Process mining aims to discover various issues and problems hidden in the process by visualizing invisible business processes from the event log data.

In terms of this “visualization of the process”, process mining is often likened to an X-ray. However, just as in the treatment of diseases, the ultimate goal is not the discovery of the lesion (Inefficiencies and bottlenecks) but the implementation of appropriate treatment (improvement measures) and the return to a healthy state, in other words, the realization of an improved “ideal process(to be proess)”.

Let’s start by outlining the flow of medical activities in a hospital. Broadly speaking, there are two stages: the “diagnostic stage” and the “treatment stage”.


●Medical activities

Diagnostic stage

Patient

The starting point for treatment is when a patient comes in with some kind of symptom such as fever or cough.

Preliminary interview

First, we will ask questions about the extent of your current symptoms and conduct an interview.

X-rays

Using an X-ray machine, the area where the lesion is thought to exist will be photographed.

x-ray photograph

The presence of the lesion is confirmed by looking at the X-ray photograph.

Diagnosis

From the results of the X-ray photos, you can determine what diseases the patient have.

Physical examination

In addition, various physical exam and tests will be performed to verify the correctness of the above diagnosis.


●Treatment Stage

Treatment policy

The course of treatment is based on the results of the diagnosis and the patient’s wishes. For example, it’s about whether to carry out surgery or how to treat medication.

Surgery

If it is better to remove the lesion, surgery will be performed.

Medication

The treatment is performed by administering medications alone or in conjunction with surgery.

Recovery

The etiology has been eliminated and the symptoms are gone. Treatment is complete.


Next, we’ll outline the steps to improve business processes along the path of diagnosis and treatment at the above hospital.


●Business Process Improvement

Understanding the current situation – Diagnostic stage

Process with problems – Patient

Select processes that are experiencing problems as phenomena, such as long throughput, high operating costs, customer complaints, etc., as targets for improvement.

Process Setup – Preliminary interview

Basic information related to the process to be improved, such as an overview of the process, the number of processes, and the department or person in charge, will be organized through interviews. If there are any specifications or manuals for the system involved in the process, check them as well.

Process Mining – X-ray

Based on the event log data of the process to be improved, we analyze it using a process mining tool and create a flowchart of the current process.

As is process – X-ray photograph

We analyze the current process from various perspectives, such as frequency and time required.

Problem identification – Diagnosis

Based on the results of the above analysis, we identify the areas that are causing problems or issues as a phenomenon, i.e. inefficient procedures that are taking too long, or bottlenecks that are piling up pending cases.

On-site interview and observation – physical examination

To identify the problem areas, we conduct interviews with the person in charge at the site and conduct observational surveys to identify the root cause.

The root causes of process inefficiencies and bottlenecks are: too many meaningless steps, too many mistakes, too many reworkings, and too few people assigned to deals that need to be done.


Improvement Activities – Treatment Stage

Improvement Policy – Treatment Policy

Once we have identified the various problems and issues related to the process and the root causes of these problems and issues, we plan improvement measures.

As a major improvement policy, it is important to first clarify the objectives, such as reducing throughput, reducing costs, and improving customer satisfaction.

Implementation of improvement measures – Surgery and Medication

There are a variety of options for improvement measures, ranging from major to minor modifications.

BPR (Business Process Re-engineering), which is a zero-based re-engineering of the process, can be compared to surgery. Replacing manual tasks with RPA software robots might be like replacing an artificial heart.

If a small change in procedure could improve the time required, it would be a disease that could be treated with simple medication.

Improved Process (To be process) – Recovery

Once the desired process has been achieved as a result of effective improvement measures, the project is complete.


Just as regular check-ups are necessary in the treatment of a disease, it is important to continuously monitor the target process to ensure that problems do not recur or new problems arise.

プロセスマイニングとデータマイニング・AI、BPMとの関係

process mining and data mining and BPM

How process mining can relate to data mining, AI and BPM.

プロセスマイニングと密接な関係がある隣接分野があります。ひとつはデータマイニング・AI、もうひとつはBPM(Business Process Management)です。

今回は、どのように関係があるのかを簡単にご説明しましょう。

まずは「データマイニング・AI」とは何かから説明します。データマイニングは、基本的にビッグデータを対象とした分析手法であり、その主な目的はものごとの因果関係や典型的なパターンのような「法則性」を発見して、様々な意思決定に役立てることです。

例えば、各地の気温、湿度などの天候情報を大量に収集し、データマイニングでそのデータを分析することで、どのような状況において晴天になりやすいのか、それとも雨天になりやすいのかの予測式がつくられ、天気予報に活用されています。

データマイニングでは、数十年前から活用されてきた「多変量解析」の手法、例えば、回帰分析や、クラスター分析、決定木分析に加え、近年は主にニューラルネットワークによるディープラーニングが飛躍的な進歩を遂げ、ものごとを判別したり、予測する精度が大きく向上しています。一般に、これらの分析手法のことは「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」と呼ばれますが、AIはデータマイニングにおいて頻繁に利用される手法なので、当記事では「データマイニング・AI」と一括りにしています。

さて、データマイニングはあらゆる分野のあらゆるビッグデータを分析対象としますが、基本的に「プロセス」を対象とはしてきませんでした。ある瞬間、すなわちスナップショット的な静的なデータを抽出して、要約したり、分類したり、因果関係を見出してきたりしたのです。

一方、プロセスマイニングは、文字通り、時系列のひとつながりになった動的なデータから、プロセスの流れを描き出すこと、すなわち「プロセスモデル」を作成することが基本にあります。もちろん、プロセス処理件数や処理時間など、プロセスに関わる静的な各種統計量も併せて算出する点は、データマイニングと共通しています。

こう考えると、データマイニングとプロセスマイニングは、分析手法としては兄弟分のようなものです。(どちらにも「マイニング」という言葉が含まれていますし)

ただ、プロセスマイニングを主体に考えると、プロセスに関わる様々な分析を深めていくうえで、データマイニング、AIの手法が応用されています。例えば、現在処理中の案件(ランニングケース)の終了までのリードタイムを推測するためには、データマイニングにおける「予測分析」が採用されています。

それ以外にも、必要に応じて、クラスター分析や決定木分析などが活用可能であり、今後も、プロセスマイニングツールとしての分析の幅や精度を高めるためにデータマイニングの手法がプロセスマイニングに取り入れられていくと考えられます。

では次に、BPM(BPM)について考えてみましょう。BPMはシンプルにいえば、プロセスを改善することを目的として、プロセスの現状を分析し、問題点を解消するto beプロセスを設計し、現場に展開・監視を行う一連の活動です。

このBPMの活動のうち、とりわけ「現状分析」において、プロセスマイニングの基本アプローチのひとつ、「プロセス発見」は役立ちますし、その後の設計、展開、監視においても、プロセスマイニングが提供できる「適合性検査」、「プロセス強化」のアプローチはBPMにとって強力な武器となりえます。

このように、プロセスマイニングとデータマイニング・AI、BPMはお互いに補完しあえる関係にあると言えます。プロセスマイニングのゴッドファーザー、Wil van der Aalst教授は、「プロセスマイニングは、データマイニングとBPMをつなぐ橋である」と述べられていますが、まさに、BPMの取り組みにおいて、プロセスに特化したデータマイニングとしての「プロセスマイニング」は大きな役割を果たしていくと思われます。