DX成功の鍵を握る「BPM-COE」とは何か?

dx digital transformation

デジタル化、グローバル化が急速に進む経済・社会において、DX、すなわち「Digital Transformation」に現在、多くの企業が取り組んでいます。DXの取り組みの中には、「紙の資料をデジタル化する」といった初歩的なものも含めるのが一般的ではあります。しかし、そうしたマイナーなデジタル化はあくまで「とっかかり」に過ぎません。

DXの本質、言い換えると究極のゴールは、自社のビジネスモデル、およびビジネスプロセスを全体的に変革することであること。ただし、デジタル経済、グローバル経済が進む現在では、デジタルを活用した変革に必然的になるということを理解しておく必要があります。

では、最終的には全社的な取り組みとなるDXの成功の鍵を握るものは何でしょうか?

もちろん、DX成功の鍵はひとつだけではありません。しかし、他のあらゆるものが揃ったとしても、これなくしては、DXを着実に推進させ成功に導くことはできないと、確信を持って言えるものがあります。それは、DXを推進する常設の専任部署である「COE(Center of Excellence)」です。特に、DXの取り組みの肝となるビジネスモデル、ビジネスプロセスを変革するためには、BPM(Business Process Management)と呼ばれる、包括的な方法論が有効であることから、BPM-COEと呼ぶ専任チームの立ち上げが重要と考えます。

これまで、部署単位でRPAによるタスク自動化を実現し、部分的な改善には成功してきたものの、会社全体での取り組みにまでは広がることがなく、「このままでは本来のDXに辿り着けない」と焦燥感を募らせた企業が、COEを設置する動きが活発になっていくと、私は考えています。

今回は、DX成功の鍵のなかでも最も重要な「BPM-COE」について解説します。


BPM COE (Center of Excellence)とは?

BPMについてはひとまず脇に置いて、COEについて説明しましょう。COEはひとことで言えば、部門横断型の業務を担当する特任組織です。基本的には常設であり、専任のメンバーが所属します。すでにCOEを立ち上げている企業も増えてきていますが、具体的には、「BPR部」や、「DX推進部」といった部署名で運営されていることが多いようです。

一方、BPM(Business Process Management)は、ビジネスプロセスを適切に運営するための方法論です。現状(as-is)のプロセスの改善だけでなく、新しいビジネスモデルに基づく、あるべき(to-be)プロセスの設計と展開、安定的運用と継続的な監視までをカバーする包括的なものです。

したがって、BPM-COEは、DXの推進の核となるビジネスモデル、ビジネスプロセスの改善や再設計、運用、継続的監視を通じた継続的改善のための方法論に基づく、DX推進の役割を果たす部署、ということになります。

なぜ、BPM-COEは部門横断型の組織なのか?

前述したように、DXの最終的なゴールは、会社全体のビジネスモデル、ビジネスプロセスの見直しです。したがって、製造業であれば、調達、生産、物流、販売、マーケティング、サービス、財務など広範囲の部署にまたがって価値を生み出す「バリューチェーン」全体を俯瞰的に捉え、全体最適化の視点でDXに取り組む必要があるからです。

value chain

なぜ、常設の特任組織なのか?

会社再建のための一時的な取り組みであれば、かって日産自動車において、各部署からのメンバーで編成されたバーチャルな組織、「ファンクショナルチーム」のような暫定組織が推進役となることも可能でしょう。しかし、DXで狙う、根本的な全社変革は長期的な取り組みであり、かつ継続的に改善し続けなければなりません。またその実行・運用に当たっては、デジタルの知識を含む高度な専門性が求められることから、データ分析やコンサルティングスキルを持つ専門職も含む常設のBPM-COEが設置されなければならないのです。


BPM-COEの役割と主要タスク

BPM-COEの基本的な役割は、全社最適化の視点で「自社のビジネスシステムやビジネスプロセスをどのように変革すべきか」を企画し、全社に展開するとともに、それによって影響を受ける各部署の業務の見直しを支援することです。すなわち、BPM-COEは、DX推進の司令塔であると同時に、各部署の変革を手助けするコンサルタントの役割を果たす必要があります。

また、どのような変革であれ、ITソリューションの導入や開発がほぼ必ず伴いますので、現場部門と、ITシステム開発を担当するIT部門との間を円滑につなぐ役割を果たさなければなりません。

BPM-COEの主要タスク

BPM-COEが主導すべきタスクには以下のようなものがあります。

 ・現状(as-is)のビジネスプロセスを把握し、見える化するための業務分析を行う 

 ・見える化された現状プロセスにおける改善ポイントを洗い出し、優先順位をつけつつ改善施策を立案する

 ・改善施策を具体的な実行計画に落とし込み、変革が完了するまでの変更管理を行う

 ・変革後の効果を評価するとともに、継続的な運用管理を行い、継続的な改善を主導する


BPM-COE所属メンバーに求められるスキル

 BPM-COEに所属するメンバーにはどのようなスキルが求められるでしょうか。基本的にはなんらかの専門性を有するエキスパートである必要があります。必要となる主なスキルとしては次のようなものが挙げられます。

・ビジネスモデルや、ビジネスプロセスを作成できるスキル・・・ビジネスアナリシス、ビジネスモデリング、ビジネスプロセスモデリング(ビジネスアナリスト、ビジネスコンサルタントなどと呼ばれる役職の担当)

・ビジネスモデル、ビジネスプロセスを定量的、および定性的に分析し、改善すべき課題を抽出できるスキル・・・リーン、シックスシグマ、データ分析、プロセスマイニング、タスクマイニング等含む(ビジネスアナリスト、プロセスアナリスト、データサイエンティストなどと呼ばれる役職が担当)

・あるべき(to-be)ビジネスモデル、ビジネスプロセスを着想、設計できるスキル・・・ワークデザイン、デザインシンキング、アートシンキング等、各種発想法含む(ビジネスアーキテクト、プロセスアーキテクトなどと呼ばれる役職の担当

・ビジネス要求をITの機能要件に落とし込み、またシステム開発のディレクションができる機能(ビジネスアナリスト、システムエンジニアなどと呼ばれる役職の担当)

・プロジェクトマネジメントスキル(COEは継続的な変革の取り組みを主導するものとはいえ、個々の取り組みはプロジェクトとしての立ち上げとマネジメントが必要です)

team member

COEが機能するためには

さて、DXを主導する専任組織であるBPM-COEを立ち上げたのはいいが、うまく回らないケースがあります。うまく回らない原因についてもいろいろと挙げることができますが、逆にきちんと機能するための最低限の必要条件は、トップマネジメントの全面的なバックアップがあることです。

多数の部門が関わる全社レベルのビジネスモデルの見直し、またエンド・ツー・エンドのビジネスプロセスの根本的な組み直し、また大胆なデジタル化に取り組むことになるわけですから、現場からの反発や抵抗が不可避です。このため、トップマネジメントが、全社体制でDXを推進することの意義を語り、ビジョン、ミッションを明確に示しつつCOEを全面的にバックアップすることが求められます。

The Road from Process Mining to Augmented Business Process Management (Japanese ver.) – Marlon Dumas

augmented BPM pyramid

当記事は、Tartu大学教授、Marlon Dumas氏の掲載許諾を得て日本語に翻訳したものです。日本語での理解がしやすいよう、多少補足・意訳している箇所があります。日本語版の文責はすべて松尾にあります。

Marlon Dumas氏は、BPM(Business Process Management)、Process Miningの研究者として世界的に著名です。オープンソースのプロセスマイニングツール、「Apromore(アプロモーレ)」を開発販売するApromore Pty Ltdの共同創業者でもあります。

また、世界の多数の大学において、BPMの教科書に採用されている『Fundamentals of Business Process Management』の共著者です。なお、『Fundamentals of Business Process Management』の日本語版が2022年中に刊行予定です。


The Road from Process Mining to Augmented Business Process Management

プロセスマイニングから拡張ビジネスプロセスマネジメントへ

– Marlon Dumas, Professor at University of Tartu | Co-founder at Apromore

ビジネスプロセスマネジメント(BPM)の分野において、2021年はわくわくする一年となった。プロセスマイニング、タスクマイニング、デジタルプロセスツイン、予測プロセスモニタリングなどの分野で、導入の成功事例や報告が相次いだ。

そして、これからやってくるものがまだある。私たちは、BPMに対する新しいアプローチの誕生を目の当たりにしようとしているのである。データ分析と人工知能(AI)の手法を活用して、継続的なプロセス改善を実現するアプローチである。私たちはこのアプローチを拡張BPM – Augmented BPM –と呼んでいる。

2022年には、拡張BPMの方向にさらに歩みを進めることになるだろう。この記事では、拡張 BPMの出現をもたらす潮流と、これらの潮流から、組織がどのように利益を得られるかを探っている。


拡張 BPMとは?

拡張 BPMとは、データ分析とAIに基づき、プロセスの設計時と、プロセス実行時の両方でプロセス改善の意思決定を行う、ビジネスプロセス管理のアプローチである。

拡張BPMは、個々のタスクの実行や意思決定の自動化(例:機械学習コンポーネントを使用して顧客の苦情を分類する)に、分析やAIを使用する以上のものである。それは、分析とAIを全面的に利用して、ビジネスプロセスを継続的に監視し、適応させ、また再設計することである。

拡張 BPM ピラミッド

拡張 BPMがカバーする範囲をよりよく理解できるよう、図1に示したような「ケイパビリティ(能力)のピラミッド」として概念化した。

augmented BPM pyramid
図1 拡張BPMピラミッド

最下層には、「記述的プロセスマイニング – Descriptive Process Mining -」がある。(これは、従来のプロセスマイニングの領域である)プロセスマイニングは、企業システムから抽出したデータセットを用いてビジネスプロセスを分析する技術である。これらのデータセットはイベントログと呼ばれる。イベントログは、ビジネスプロセスの文脈においては、アクティビティ(またはアクティビティ内のステップ)の実行を捕捉した記録の集合体である。

プロセスマイニングには様々な技術が含まれるが、これらは4つのケイパビリティ領域に分けられる。

自動化されたプロセス発見 – Automated Process Discovery

データからプロセスモデルを発見し、プロセスの主な経路や例外を明らかにし、無駄(反復・手戻りや、過剰な処理など)を浮き彫りにする機能。

適合性検査 –  Conformance Checking

コンプライアンスルールの違反(請求書のない購買発注など)や、観測された実際の手順と、準拠すべき規範的手順との乖離など、望ましい手順からの逸脱を検出する機能。

パフォーマンス・マイニング – Performance Mining

定量的なパフォーマンス指標をプロセスの要素に結びつける機能。例えば、SLA(Service level Agreement)に対する違反に関わるボトルネック、反復・手戻りの繰り返しがもたらす過剰なコストや無駄を明らかにする。

バリアント分析 – Variant Analysis

異なるサブセットのケース(例えば、地域別)でプロセスがどのように実行されているかを比較することにより、プロセスにおける好ましい、あるいは好ましくない逸脱を識別する機能。

これらの機能により、ボトルネック、反復・手戻り、コンプライアンス違反などの摩擦が起きている箇所を特定し、その原因やKPI(主要業績評価指標)への影響を調査することができる。これらの機能を利用して、継続的なプロセス改善に取り組んでいる企業は多い。

記述的プロセスマイニングは、それ自体が価値のある能力であるが、その長期的な価値は、それが他の豊富な能力につながる扉を開くことにある。実際、組織がプロセスマイニングのために収集した同じデータセットを使って、将来何が起こるかを教えてくれる予測モデルを構築することができる。

これにより、拡張 BPMピラミッドの第2層である「予測的プロセスマイニング – Predictive Process Mining – 」にたどり着く。記述的プロセスマイニングでは、プロセスが過去にどのように実行されてきたかを理解ができる。一方、予測的プロセスマイニングでは、プロセスが将来どのように展開するかを予測する。予測的プロセスマイニングには2つの機能がある。

予測的プロセスモニタリング – Predictive  Process Monitoring

プロセスの将来の状態を予測する機能。例えば、O2C(Order-to-Cash:受注から入金まで)のプロセスでは、顧客が注文した製品が時間通りに発送されるか、あるいは遅れて発送されるかを予測することができる。一般的に、予測的プロセスモニタリングは機械学習技術を用いて実装される。まず、過去のデータをもとに予測モデルを作成し、それをイベントストリーム(現在実行中のプロセス)に適用して将来どうなるかを予測する。

デジタルプロセスツイン – Digital Process Twin

プロセスを変更した場合の影響を予測すること。例えば、ERPシステム上で実行されるO2Cプロセスを考えてみよう。記述的プロセスマイニングを適用することで、プロセスの包装工程でボトルネックが発生し、多くの遅延が発生していることが判明するかもしれない。ここで、プロセスマイニングと機械学習を用いて、デジタルプロセスツイン(DPT)と呼ばれるプロセスの複製を構築する。そして、このDPTを用いて、包装工程にスタッフを追加投入した場合に何が起こるかをシミュレーションする。DPTでは、このような変更やその他の実行可能な変更が納期遅れに与える影響度合いを推定することができる。管理者は、この機能のおかげでプロセス改善行動のROIを推定し、より効果な改善行動を見出すことができる。

プロセスがこの先どうなるかを予測することは役に立つ。しかし、予測が価値を生むのは、それに基づく改善行動があってこそだ。これが、拡張 BPMピラミッドの第3層である「処方的プロセス改善 – Prescriptive Process Improvement- 」である。処方的プロセス改善とは、予測をアクションに変えることであり、1つまたは複数のKPIに関して、ビジネスプロセスのパフォーマンスを改善するために最適なタイミングで実行される仕組みである。

この層では、「プロセスマイニング」から「プロセス改善」へと焦点が移る。プロセスマイニングでは、データからパターンを発見し、そのパターンを使ってプロセスを説明したり、予測を立てたりすることに焦点を当てる。ピラミッドの第3層では、パターンは二の次となり、代わりに、改善アクションを扱う。

処方的プロセス改善には2つの機能がある。

処方的プロセスモニタリング – Prescriptive Process Monitoring

1つまたは複数のKPIに関して、プロセスのパフォーマンスを最適化するためのアクションを、リアルタイムまたはそれに近い状態で推奨する機能。例えば、ある処方的プロセスモニタリングシステムが、バッチ製品の出荷が遅れる可能性を検出したとする。そのとき、遅延の影響を最小限に抑えるため、当該製品を注文した顧客に連絡して、製品を2つのバッチに分けて発送する選択肢を提案することを推奨できるだろう。

自動化されたプロセス改善 – Automated Process Improvement

例えば、不良率やサイクルタイムを最小限に抑えつつ、コストを削減するなど、相反するKPI間のトレードオフを実現するために、プロセスに変更を加えることを推奨する機能。自動プロセス改善システムは、週の初めに発生する特定のボトルネックを軽減するため、一部の担当者の割り当てルールや作業スケジュールを変更するようにプロセスオーナーに提案したり、誤発注を防ぐため、一部の発注書に追加の検証ステップを実行するように提案したりする。

上記のようなレコメンデーションは、行動と結果の間の因果関係を発見し、その関係を利用して、プロセスのどのような場合に(いつ)特定の行動を行うのが最適かを判断する因果推論と呼ばれる技術を用いて作成できる。

処方的プロセス改善では、人間のプロセス参加者に対し、機械が可能なアクションを提案する。人間の参加者は、これらの推奨事項を適用するか、あるいは無視するかを決定する。言い換えれば、システムと人間の参加者の間のやりとりは一方通行である。もし、改善アクションが、人間の参加者とAIとの会話の結果だったらどうだろうか?

これで4層目が見えてきた。「拡張 BPM – Augmented BPM – 」である。拡張 BPMは、ビジネスプロセス実行システムの自律性と、マシンと人間の参加者との間での豊かな対話が行われるという点で、処方的プロセス改善を超えている。拡張 BPMはまだ始まったばかりの概念であるが、すでに2つの特徴的なテーマを特定することができる。

対話的プロセスの最適化 – Conversational Process Optimization

プロセスのパフォーマンスが低下する状況を自動的に検出し、そのパフォーマンス低下の原因を人間のプロセス参加者(プロセスオーナーなど)に説明し、その対策を人間の参加者と議論する機能。例えば、対話型プロセス最適化システムが、ある種類の出荷がしばしば遅れることを検出したら、プロセスオーナーにこれらの出荷の輸送ルート変更をすべきであると提案する。人間の参加者は、ルート変更オプションのうち、いくつかは費用が増える可能性があるために採用しないかもしれない。あるいは、顧客に対して、複数の輸送ルートオプションを提供すると決定するかもしれない。当システムは、顧客の所在地に応じて、各顧客に複数の選択肢を提供することができる。

適応型自動運転プロセス – Adaptive Self-driving processes

自動化されたシステムが、プロセスの中で起こりうる次のアクションを判断し、次に取るべきアクションを決定する。また、人間への引継ぎが必要な状況を検出できる能力のこと。例えば、過去の実行データに基づいて、発注書を受け取った際に行うべき検証手順をシステムが決定することができる。これまでに見たことのない新しいタイプの購買注文をシステムが検出すると、人間の担当者に引き継ぎ、その担当者が、この新しいタイプの注文に対してどの検証を行うべきかを決定する。当システムは担当者の判断を記録しておおり、このタイプの発注書を再び受け取ったときにはそれを適用する。

ピラミッドのこの最後の層では、「プロセス改善」から「BPM」へと移行している。拡張BPMは、パターンを発見したり、プロセス再設計の提案を行うだけではない。拡張 BPMは、BPMのライフサイクル全体を扱うアプローチである。

拡張 BPMの恩恵を受けるために、自社は何ができるか?

多くの読者にとって、拡張されたBPMはあまりにも未来的であり、すぐに行動を起こすには値しないと思われるかもしれない。しかし、ピラミッドの最初の二つの層は、すでに実際に広く活用されている。また、第3の層を支える技術は急速に進化しており、すでに他の分野で成功を収めている。拡張 BPMのピラミッドを登ることで得られる利益は極めて大きい。ピラミッドを登るステップを踏まない組織は、取り残される可能性が高くなるだろう。その機会損失は無視できないほど大きい。

ピラミッドに沿った取り組みを考えている企業は、その過程で重要な3つのポイントを心に留めておくとよい。

1.基礎を固め、登り始め、登り続け、先延ばしにしない。

多くのマネージャーは、「データがない」「データが十分ではない」と言って、プロセスマイニングの導入を先延ばしにする。  確かに、プロセスマイニングのためのデータを得ることはしばしば困難である。しかし、その効果は数千もの成功事例で繰り返し実証されている。プロセスマイニングを行うためのデータを得ることで、多くの扉が開かれる。今日、プロセスマイニングに使用されたデータは、明日には予測的プロセスモニタリングや、デジタルプロセスツインの構築に使用することができる。データの収集と前処理という障害を乗り越えれば、その可能性は無限に広がる。なお、タスクマイニングは、企業システムでは、データ収集が行えない場合に、データ収集のための別の方法を提供することに留意されたい。

2.レイヤを飛ばしてはいけない。

BPMピラミッドの下層部は、上層部からビジネス価値を引き出すための基盤となる。上の層の機能を採用することで最大限の利益を得たいと考える組織は、下の層をマスターする必要がある。

3.戦略との整合を取り、段階的にガバナンスを構築する。

プロセスマイニング、予測モニタリング、また処方的プロセス改善の取り組みは、組織の戦略的優先事項に基づいて行われる必要がある。拡張BPMピラミッドの機能は、何よりもまず、組織にとって重要なビジネスプロセスに適用されるべきである。また、これらのテクノロジーは、1つのプロセスずつ段階的に採用することが重要だ。時間をかけて、ピラミッドのテクノロジーが予測可能、かつ繰り返し価値を生み出すことを保証するために、ガバナンス構造が必要である。しかし、そこに到達する前に、社内でいくつかの成功事例を作り、幹部の支持を得る。そうして、拡張BPMピラミッドのすべての能力が具体的な価値を生み出すことを示すことで、彼らの支持を維持することが重要である。


免責事項、承認およびライセンス


この作品は、タルトゥ大学の教授として書かれたものです。私の研究は、欧州研究評議会(PIXプロジェクト)とエストニア研究評議会から資金提供を受けています。また、オープンソースのプロセスマイニングソリューションを提供するApromoreの共同設立者でもあります。

この記事はクリエイティブ・コモンズ 表示一般ライセンス CC-BY 4.0 (CC-BY 4.0)の下でライセンスされています。

marlon dumas  Marlon Dumas – Professor at University of Tartu | Co-founder at Apromore

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【速報】Gartner, Market Guide for Process Mining 2021

 米ITアドバイザリ企業Gartnerが、2021年版となる『Market Guide for Process Mining』を2021年11月11日に公開しました。プロセスマイニングのマーケットガイドは2018年から毎年発行されており、今回が4回目の発行となります。

当記事では主なポイントを速報としてお伝えします。

2021年版においてバージョンアップされた、10個のプロセスマイニングができること(10 Capabilities for process mining)は以下の通りです。これらは、各種プロセスマイニングツールがおおむね提供している、あるいは今後提供を目指していると思われる機能とも言えます。


・プロセス、例外処理、案件、そして従業員の関わりについて自動的にモデル(フロー図など)を作成

・カスタマーとのやりとり、カスタマージャーニーを自動的にモデル化すること、および関連分析

・適合性検査、およびギャップ分析

・プロセスモデルの強化(改善)のための追加的分析(属性を付加した分析)

・データ前処理、データクレンジング、ビッグデータへの対応

・意思決定支援を可能にする、KPIの継続的モニタリングのためのリアルタイムダッシュボード

・予測的分析、処方的分析、シナリオ検証、シミュレーション

・プロセスマイニングアプリケーションを作成できるAPIを提供し、また高度な分析と意思決定支援が行える、様々なプロセスにまたがるプロセスマイニング分析のプラットフォーム

・ UI(User Interaction)ログに含まれる低レベルのイベントデータから有用な情報を導き出すタスクマイニング。UIログは、キーストローク、マウスクリック、データ入力などに基づいて、ユーザーが行ったタスク内の単一ステップを記録したもの

・様々な「洞察」を「行動」に移す実行機能 。これらの機能は、分析対象のアプリケーションの単純な更新から、タスクの実行をサポートするスクリプトの作成まで多岐にわたる


また、Gartnerは、プロセスマイニングが採用されるメインドライバーとして以下の5つを挙げています。

・デジタルトランスフォーメーション – Digital Transformation

・人工知能(AI) – Artificial Intelligence

・タスクオートメーション – Task Automation

・ハイパーオートメーション – Hyperautomation

・オペレーショナルレジリエンス – Operational Resilience

ハイパーオートメーションとは、ひらたく言えば、RPAなどを用いたタスクオートメーション、ワークフローやiBPMSによるプロセスオートメーション、そしてDigitalOpsによる業務オペレーション全体の自動化をチャットボット、スマーとスピーカー、AI、機械学習などの様々なテクノロジーも組み込みながら実現していこうとするものです。

オペレーショナルレジリエンスは、ビジネス環境の変化に適用するために、業務に関わる人、プロセス、情報システムを柔軟に変化させる技術です。業務のレジリエンス、すなわち弾性(回復力)が優れた企業は、競争力を維持しつつ、プロセスを局所的に、迅速に変更するために業務をスピードアップしたりスローダウンすることのできる組織能力を備えています。


標準的なプロセスマイニングのユースケースとしては以下の5つが挙げられています。なお、アルゴリズムとは、イベントログからプロセスモデルを自動的に描くために、プロセスマイニングツールに組み込まれているものです。

・アルゴリズムによるプロセス発見、分析によるプロセスの改善

・アルゴリズムによるプロセスの比較、分析、検証による監査、コンプライアンスの改善

・自動化の機会の発見と検証によるプロセス自動化の改善

・戦略と業務を結びつけ、柔軟な組織を生み出すことによる、デジタルトランスフォーメーション(DX)の支援

・アルゴリズムによるITプロセスの発見と分析に基づく、IT業務のリソース最適化の改善


2021年版で示されているプロセスマイニングの代表的ベンダー・ツールは以下の20種類です。

 ABBYYTimeline
 Appian (Lana Labs)LANA Process Mining, LANA Connect
 ApromoreApromore Enterprise Edition
 BusinessOptixBusinessOptix
 CelonisCelonis Execution Management System
 DatricksDatricks
 EverFlowEverFlow
 FluxiconDisco
 IBMIBM Process Mining
 IntegrisExplora Process
 LivejourneyLivejourney
 MinitMinit
 Process Analytics Factory (PAF)PAFnow
 Puzzle DataProDiscovery
 QPR SoftwareQPR ProcessAnalyzer
 SAP (Signavio)SAP Signavio Process Intelligence
 Software AGARIS Process Mining
 SorocoScout Platform
 StereoLOGICStereoLOGIC Process Mining, StereoLOGIC Task Mining
 UiPathUiPath Process Mining, UiPath Task Mining

「製造業DXの推進に役立つプロセスマイニング:活用のヒントとケーススタディ」(講演)

gyoumu jidoka 2021

業務自動化カンファレンス2021秋の東京会場(10月14日)にて、講演の機会をいただきました。演題は、「製造業DXの推進に役立つプロセスマイニング:活用のヒントとケーススタディ」です。ライブ配信も予定されています。 ご興味ある方はぜひ登録、またご来場ください。

ご登録はこちらからどうぞ!

gyomu jidoka 2021 jun matsuo

プロセスマイニングツール選定のための参照マトリックス

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Reference Matrix for Process Mining Tool Selection

English follows Japanese. Before proofread.

プロセスマイニングは近年、DX推進・定着に役立つソリューションとしての認知・理解がさらに進みました。また、先のIBMによるmyInvenioの買収や、SAPによるSignavioの買収が示すように、プロセスマイニングが、大手IT企業のソリューションに組み込まれることで、企業のITシステム開発・運営に欠かせない構成要素として重要性が高まっていくことは間違いありません。

さて、企業が、プロセスマイニングを活用したビジネスプロセス改善やシステム改修・開発に取り組むに当たって、言うまでもなく、プロセスマイニングツールの採用が必須であり、自社にとって最適なツールの選定は成功の大きなカギを握っています。

今回は、自社では、プロセスマイニングツールのどのような機能が特に必要となるのかを判断する助けとなるマトリックスを解説いたします。


マトリックスの横軸:時間

分岐対象は、時間と言う視点では、過去の完了したプロセスなのか、それとも現時点で処理中のプロセスなのか、それともこれから遂行されるであろう未来のプロセスなのか、ということです。

一般に、データ分析は完了した過去データを対象に行います。プロセスマイニング分析においても同様で、完了したイベントログデータをプロセスマイニングツールで分析することで、現状プロセスを自動的にモデル化し、様々な視点での分析(基本分析)を行います。

例えば以下のような基本分析があります。

・頻度分析

・パフォーマンス分析(所要時間やコストの視点での分析)

・バリアント分析

・適合性検査(現状プロセスと理想プロセスの比較分析) 

など。

プロセスマイニングツールの進化系では、現在進行中のイベントログデータをリアルタイムに近い頻度でプロセスマイニングツールに取り込んで、リアルタイム監視を行い、逸脱などの問題を探知すれば、関係者にアラートを出すという機能を備えています。

これから行われるであろう未来のプロセスについては、以下のような機能が対応します。

・シミュレーション(What-IF)

現状のプロセスをなんらか改善した場合に、どれだけの改善効果(スループット短縮やコスト削減など)が得られるのか、シミュレーションを実行する。

・モデリング

実装すべき理想プロセスの流れをBPMN形式でモデル化する。

・予 測

仕掛中案件が、今後どのような手順で処理されていくことになるのか、所要時間がどの程度になるのか、といった予測をAIなどを活用して行う。

・レコメンデーション

上記予測結果を踏まえて、問題発生や処理時間の長期化を未然に防ぐための最善の打ち手を提案する。

・自動的なプロセス改善(AutoPI:Automated Process Improvement)

プロセス改善のための打ち手を一定の条件において、プロセスマイニングツールが自動的に実行し、迅速な対応を実現する。


マトリックスの縦軸:ビジネス層 

ビジネス層とは、プロセスの視点でより詳細な構成要素に因数分解していくものです。管理的には、上位にあるほど「戦略的」であり、下層にむかって「戦術的」、そして「業務的(日々の現場管理)」な視点が必要となります。

最上部は、ビジネスモデルです。そこから、企業全体のプロセスをEnd-to-Endで把握するバリューチェーン、バリューチェーンを構成する個々のプロセスと粒度が細かくなっていきます。

どのようなビジネスプロセスであれ、それはいくつかのサブプロセスに分解できます。さらにひとつのサブプロセスは、より細かいタスクで構成され、そのタスクは複数のアクティビティで構成されています。

たとえば、経理部門での「請求書処理」というサブプロセスを考えると、これは「請求書を受領する」、「請求書の内容を確認する」、「請求書を経理システムに登録する」、登録した請求書に対する支払処理を行う」といったアクティビティが含まれます。

これらのアクティビティのうち、「請求書を受領する」の場合、「PDF請求書添付のメールを開封する」、「添付されたPDF請求書をダウンロードする」といった一つひとつのタスクステップが実行されていくことになります。

さらにこうしたタスクステップは、PCの操作単位では、メールソフトアイコンをクリック、メール開封をクリック、添付ファイルをクリックといった最小単位のアクティビティが実行されており、これらはこれ以上分解できないアクティビティであることから「原子アクティビティ」と呼ばれます。

プロセスマイニングが分析対象とするのは、基本的には、プロセス層からアクティビティ層(場合によってはタスクステップ層)です。ITシステム内に記録されているトランザクションデータは多くの場合、比較的粒度の粗いアクティビティレベルであるという分析対象データそのものの制約があります。

そこで、より粒度の細かいタスクステップ、原子アクティビティまでの分析を行うために活用されるのがタスクマイニングです。タスクマイニングはまだ誕生したばかりの分析手法であり、BI的な集計以上の深い分析方法についてはまだ試行錯誤の段階ではありますが、プロセスマイニングと併せて活用することで、特にRPAによるプロセス自動化に貢献します。


さて、貴社のビジネスプロセス課題と照らして、分析対象とすべきなのは、過去、現在、未来のどれでしょうか?また、ビジネス層としては、どの粒度のプロセスでしょうか?

ツールベンダーのご担当の方とは、一緒にこのマトリックスを見ながら、自社はどこに問題意識を持っているのかを認識しつつ、これらの機能をどの程度実装できているかを把握していきましょう。

なお、マトリックスには記載しておりますが、プロセスマイニングの対象とはならない、ビジネスモデル層については、ビジネスモデルキャンバス(BMG:Business Model Canvas)、プロセスモデルキャンバス(PMG:Process Model Canvas)といったツールが活用できます。


Reference Matrix for Process Mining Tool Selection

In recent years, process mining has been further recognized and understood as a useful solution for promoting and establishing DX. In addition, as shown by the recent acquisition of myInvenio by IBM and Signavio by SAP, there is no doubt that process mining will become increasingly important as an indispensable component of corporate IT system development and operation as it is incorporated into the solutions of major IT companies.

Needless to say, the adoption of process mining tools is essential for companies to improve their business processes and to renovate and develop their systems using process mining, and the selection of the best suited tool for your company is a major key to success.

In this article, I will explain a matrix that will help you determine what functions of process mining tools are particularly necessary for your company.

Horizontal axis of the matrix: Time

From the perspective of time, there are three dimensions which are completed processes in the past, processes in progress at the moment, and future processes to be executed in the future.

In general, data analysis is done on completed historical data. The same is true for process mining analysis. By analyzing completed event log data with process mining tools, we can automatically model current processes and analyze them from various perspectives (basic analysis).

For example, the following basic analysis is available.

  • Frequency analysis
  • Performance analysis (analysis from the perspective of time required and cost)
  • Variant analysis
  • Conformance checking (comparative analysis of current process and ideal process) 

etc.

There are some process mining tools which can do continuous monitoring and if problems such as deviations are detected, alerts are sent to the relevant parties by importing ongoing event log data to the process mining tool at a frequency close to real time.

For future processes that will take place in the future, the following functions will be supported.

Simulation (What-IF Analysis)

Simulate how much improvement (throughput reduction and cost reduction, etc.) can be obtained if the current process is improved in some way.

Modeling

Model the flow of the ideal process to be implemented in BPMN format.

Forecasting

predict how in-process projects will be processed in the future and how much time will be required by using AI.

Recommendations

Based on the results of the above predictions, the tool proposes the best measures to prevent problems from occurring and prolonging the processing time.

Automated Process Improvement (AutoPI)

A process mining tool automatically executes measures for process improvement under certain conditions to achieve a quick remedy.

●Vertical axis of the matrix: Business layer 

The business layer is a factorization into more detailed components from a process perspective. Administratively, the higher the layer, the more “strategic” it is, and the lower the layer, the more “tactical” it is, and the more “operational” (day-to-day on-site management) it needs to be.

At the top is the business model. From there, the granularity becomes finer, including the value chain that grasps the processes of the entire company from end-to-end, and the individual processes that make up the value chain.

Any business process can be broken down into a number of sub-processes. One more sub-process is composed of finer-grained tasks, and those tasks are composed of multiple activities.

For example, if we consider a sub-process called “invoice processing” in the accounting department, this includes activities such as “receiving invoices,” “checking the contents of invoices,” “registering invoices in the accounting system,” and “processing payments for registered invoices.

Among these activities, in the case of “receive invoice,” each task step is executed one by one, such as “open the email with the PDF invoice attached” and “download the attached PDF invoice.

In addition, these task steps are executed in the smallest units of PC operations, such as clicking on the mail software icon, clicking on open mail, and clicking on the attachment. These are called “atomic activities” because they cannot be decomposed any further.

Process mining basically analyzes the activity layer (or task step layer, as the case may be) from the process layer. transactional data recorded in IT systems are often at the activity level, which is relatively coarse-grained. In many cases, transaction data recorded in IT systems is at a relatively coarse activity level.

Therefore, task mining is used to analyze task steps and atomic activities with finer granularity. Task mining is still in its infancy, and it is still at the stage of trial and error for deeper analysis besides BI-like aggregation. However, by using it together with process mining, it can contribute to process automation, especially with RPA.

Now, in light of your company’s business process issues, which should be the target of analysis: past, present, or future? Also, at what granularity should the process be analyzed as a business layer?

With the person in charge of the tool vendor, let’s look at this matrix together to understand the extent to which these functions can be implemented while recognizing where the company is aware of the issues.

For the business model layer, which is not subject to process mining, tools such as Business Model Canvas (BMG) and Process Model Canvas (PMG) can be used.

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DXに必須!プロセスマイニング活用入門

processmining in practice cover

Process Mining in Practice – Business Process Improvement with fact-based process discovery and BPM perspective

日本人による初めてのプロセスマイニング書籍、『DXに必須 プロセスマイニング活用入門:ファクトベースの業務改善を実現する』を2021年5月に発行します。

本書では、ビジネス分析のためのソリューションである「プロセスマイニング」の基本を踏まえつつ、データ分析に基づく業務プロセス改善の具体的な取り組みについて、BPM(Business Process Management)の視点で詳しく解説しています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる方、業務プロセスの根本的改革のためのBPRに取り組んでいる方、また継続的な日々のプロセス改善に取り組んでいる方にとって必携の書です。

ぜひ、お読みください。

本書についてのより詳細な情報は特設ページへ⇒

Process Mining in 2021 and Beyond – Marlon Dumas

process mining in 2021 and beyond

当記事は、Tartu大学教授、Marlon Dumas氏の掲載許諾を得て日本語に翻訳したものです。日本語での理解がしやすいよう、多少補足・意訳している箇所があります。日本語版の文責はすべて松尾にあります。

Marlon Dumas氏は、BPM(Business Process Management)、Process Miningの研究者として世界的に著名です。オープンソースのプロセスマイニングツール、「Apromore(アプロモーレ)」を開発販売するApromore Pty Ltdの共同創業者でもあります。

また、世界の多数の大学において、BPMの教科書に採用されている『Fundamentals of Business Process Management』の共著者です。なお、『Fundamentals of Business Process Management』の日本語版が2021年中に刊行予定です。


Process Mining in 2021 and Beyond

– Marlon Dumas, Professor at University of Tartu | Co-founder at Apromore

過去10年間で、プロセスマイニングはビジネスプロセスを分析し、改善するための主流のアプローチとなりました。何百ものケーススタディが文書化され、また数千もの成功事例があり、プロセスマイニングは今やBPM(ビジネスプロセス管理)分野の不可欠な一部となっています。

同時に、プロセスマイニングはダイナミックで急速に進化している分野であり、今後もさらなる進化が期待されています。過去10年間は、可視化とダッシュボード(自動プロセス発見、パフォーマンスダッシュボード、アニメーション)に重点が置かれてきました。今後数年間のうちに、プロセスマイニングは、AIベースのプロセス最適化の領域へと進化していくでしょう。

私は、2021年には5つのトレンドが到来すると考えています。


トレンド1. ロボティック・プロセスマイニング


ロボティック・プロセス・マイニングは、デジタル・ワーカーが日常業務で行う反復的な定型作業を発見することに焦点を当てたプロセス・マイニングの新しいサブフィールドです。

定型業務の例としては、1つまたは複数のドキュメントからのデータをオンラインフォームに入力したり、電子メールの添付ファイルから内部情報システムにデータをコピーしたりすることが挙げられます。

ロボティックプロセスマイニングの出発点はUI(ユーザーインタラクション)ログ(日本では「PC操作ログ」とも言う)です。業務従事者と様々なアプリケーションや情報システムとの間のユーザーのインタラクション(操作)を記録したものです。

ロボティック・プロセス・マイニング・ツールは、複数の作業者が一定期間にわたって生成したUIログを分析し、頻繁に繰り返された手順の流れ(シーケンス)を発見します。これらは「デジタル作業ルーチン」と呼ばれています。各ルーチンは分析され、例えばRPA(Robotic Process Automation)のボットや、アプリケーションオーケストレーションスクリプトを介して自動化できるかどうかを判断します。

ロボット・プロセス・マイニングの究極の目的は、作業者を付加価値のないルーチンから解放し、顧客にとって重要なことに集中できるようにすることです。このアニメーションは、ロボットプロセスマイニングのゴールを簡潔に説明しています。


トレンド2.  Causal(因果)プロセスマイニング


因果プロセスマイニングは、ビジネスプロセスの実行ログから因果関係を発見し、それを定量的に把握しようとするプロセスマイニングの新たなサブフィールドです。

このような因果関係は、プロセス管理者がビジネスプロセスの改善機会を特定するのに役立つかもしれません。例えば、注文から現金化までのプロセス(O2C)のイベントログに対するプロセスマイニング分析結果から、顧客が東南アジア出身の場合、アクティビティAをワーカーXに割り当てるか、あるいは、アクティビティBの前にアクティビティAを実行すると(その逆ではなく)、この顧客が満足する確率が10%上がる、といった因果関係を発見することができます。

因果プロセスマイニングの目的は、特定のパフォーマンス指標の点で違いをもたらす介入*を特定することです。因果プロセスマイニングの詳細については、こちらの記事をお読みください。

*介入とは、プロセスのパフォーマンスを向上させるために行う具体的な対応策を意味している。因果関係を明確にすることにより、どんな介入が効果的であるかを特定することができる(松尾注)


トレンド3.  What-if(もしも)プロセスマイニング


What-if(もしも)プロセスマイニングは、イベントログを使用して、ビジネスプロセスに対する1つ以上の変更が与える影響を理解するための方法です。

従来のプロセスマイニング手法は、「現在のプロセスのボトルネックは何か」、「現在のムダの発生源はどこか」、「リワーク(繰り返し業務)のループはどこか」などの「現状」分析の質問に焦点を当てています。

対照的に、What-ifプロセスマイニングでは、次のような質問に対応します。「来月、顧客からの注文数が2倍になったらどうなるだろうか」、「Covidの影響で、従業員(の生産性)が10%が遅くなったらどうなるだろうか」、「あるタスクを90%自動化すると、待ち時間や処理費用がどれくらい削減されるだろうか」などです。

What-ifプロセスマイニングの要となるのは、データドリブンのプロセスシミュレーションです。すなわち、実行データに基づいて、再現度の高いプロセスシミュレーションモデルを自動的に発見する機能です。従来、プロセスシミュレーションは、確率分布や統計解析に関する高度な専門知識を必要とし、非常に時間のかかる作業でした。

データドリブンのシミュレーションは、シミュレーションモデルを自動的に発見、調整、検証することで、この作業を自動化し、観測されたプロセスを忠実に再現することを可能にします。ここ数年は、イベントログからBPMNのシミュレーションモデルを検出するオープンソースのツールセット「Simod」をはじめとするデータドリブンのシミュレーションツールが登場しています。2021年に向けて、この分野ではさらに多くの開発が行われることでしょう。


トレンド4.  処方的プロセスモニタリング


プロセスマイニングに使用するものと同じイベントログは、以下のようなプロセスの結果を予測するための「機械学習モデル」を訓練することにも使用できます。

・実行中のプロセスインスタンスは時間通りに完了するのか、それとも遅れるのか

・顧客は注文を受けて満足するのか、製品を返品するのか

・サプライヤーは請求書を時間通りに支払うのか、それとも多少の遅延があるのか

予測プロセスダッシュボードを生成するツールはいくつかありますが、その中にはNirdizatiのようなオープンソースのツールも含まれています。このような予測には、間違いなく多くの潜在的なビジネス価値があります。これらのツールを使うことで、運用管理者や業務従事者は問題の発生を確認し、予防措置を取ることが可能になります。

ただし、現実には、予測監視ダッシュボードだけではほとんど役に立ちません。確かに、未完了の注文の10%が、遅延や不良品、製品間違いなど、何らかの形で顧客からのクレームにつながる可能性はわかります。しかしながら、それは私たちがそれについて、「いつ何をすべきか」を教えてくれません。すなわち、そうした問題を防ぐために、ビジネス価値を最大化しつつ、リソースをどのように配分すべきなのか?予測に基づいていつ行動すべきか?を教えてくれるわけではないのです。

処方的プロセスモニタリングは、プロセスのパフォーマンス指標を最適化する施策(「介入」と呼ぶ)を推奨するために、予測的プロセスモデルを利用する新しい技術です。処方箋的プロセスモニタリングはコストを重視します。例えば、顧客への納品の迅速化や優先順位付けのコストと、特定の顧客への早期納品のメリット(他の納品を犠牲にする可能性もあります)とのトレードオフを最適化します。また、経営者による予防措置のコストと、全体的な利益との間のトレードオフを最適化します。

処方分析技術は、eコマースの分野で高いレベルの成熟度に達しています – Youtubeなどの大手メディアサイトで使用されているレコメンド(推奨)システムを考えてみてください。私は、この技術の一部が今後数年のうちに、処方的プロセスモニタリングのエンジンに組み込まれることを予想しています。


トレンド5.  自動化されたプロセス改善(AutoPI)


現在のプロセスマイニングの方法は、主に可視化とダッシュボードに基づいています。これらの方法では、プロセス内の問題点とその解決方法を特定するためには、アナリストや専門家が一連の可視化をナビゲートする必要があります。

ビジネスプロセスの可視化は、問題(ボトルネックや繰り返し業務など)があることを示していても、それに対処する方法を教えてくれるわけではありません。たとえば、リソース(担当者)の再配置や再教育をすべきか、いくつかのタスクやハンドオフ(部門間にわたる業務の受け渡し)を自動化すべきか、どのタスクを自動化すべきか、タスクの実行方法を変更すべきか、タスクを早めに実行すべきか、それともプロセスの後半に延期すべきか、また、プロセスの早い段階で顧客にリマインダーを送るべきか、などを教えてはくれません。

自動化されたプロセス改善(AutoPI)は、ビジネスプロセスをどのように変更すべきかについての幅広い選択肢を自動的に探索します。そして、欠陥率、コスト、手作業やスループットなどの1つ以上のプロセスパフォーマンス指標を最適化するための変更の組み合わせを発見するための発育途上の技術です。

AutoPIはまだ初期段階にありますが、今後1~2年でいくつかのプロトタイプやパイロットケースが登場し、2020年代半ばには成熟したツールが登場することを期待しています。


結 論

上記は、来年のプロセスマイニングの分野で期待されるワクワクする展開のほんの一部に過ぎません。もちろん、ICPM’2020カンファレンスのインダストリーパネルで議論されたように、今後数年間で取り組むであろう課題は他にもあります。

プライバシー保護のプロセスマイニング、クロスプロセス分析、イベントログの品質の自動検証と強化などの技術的な課題に取り組むために、いくつかの進歩があることは間違いありません。また、プロセスマイニングの戦略的位置づけやガバナンスの分野では、プロセスマイニングの成熟度モデルや、「全社的プロセスコントロールルーム」のような管理概念の出現など、問題が発生したときに、反応的にプロセスマイニングの調査を開始するのではなく、プロセスが全体的かつ先を見越して管理されるような、多くの発展が期待されています。

あなたがプロセスマイニングの世界に入れば、さらなる楽しみがあるでしょう。また、プロセスマイニングを実践に取り入れることを躊躇しているBPMの実務家にとっては、成熟した現時点でのプロセスマイニングと、今後の多くの新たな開発の両方を活用することができる今が、プロセスマイニングをBPMに統合する絶好のチャンスでしょう。


免責事項、承認およびライセンス


この作品は、タルトゥ大学の教授として書かれたものです。私の研究は、欧州研究評議会(PIXプロジェクト)とエストニア研究評議会から資金提供を受けています。また、オープンソースのプロセスマイニングソリューションを提供するApromoreの共同設立者でもあります。後者の所属に偏らないようにしています。

この記事はクリエイティブ・コモンズ 表示一般ライセンス CC-BY 2.0 の下でライセンスされています。

marlon dumas  Marlon Dumas – Professor at University of Tartu | Co-founder at Apromore

→ 原文はこちらからどうぞ

プロセスマイニングの日本神話

myth vs reality

Japanese Myths of Process Mining
English follows Japanese. Befor proofread.

プロセスマイニングに対する関心が生まれたのは、日本では2018年後半から。以来、約2年が経過して、プロセスマイニングへの関心はさらに高まっており、大手企業を中心に、プロセスマイニングを導入して一定の成果を出している企業が増えています。具体例としては、通信キャリア大手のKDDI、重工業大手のIHI、物流大手の日立物流、金型商社大手のミスミなどが積極的にプロセスマイニングを活用しており、その取り組み事例が各所で報告されています。

ただ、いまだプロセスマイニングに対して懐疑的な日本企業も少なくなく、いわゆる日本特殊論ともいえる神話が語られている状況も見受けられます。

当記事は、日本企業が抱きがちな、プロセスマイニングについての2つの神話を打ち砕くことを目的としています。


神話1 日本企業のシステムは複雑すぎてプロセスマイニングでは分析できない

日本企業はSAPのようなパッケージをデフォルトのまま採用することが少なく、現状業務手順に合わせて大幅なカスタマイズを行ったり、ゼロからスクラッチで開発することが多いのは確かです。さらに、業務内容の変化に合わせて改修を重ねてきており、システム構成が非常に複雑怪奇になっていることも少なくありません。

このため、イベントログも複雑であり、プロセスマイニング分析は通用しない、と思い込んでいる方がいます。しかし、これは幻想です。

プロセスマイニング導入で先行する欧州の企業でも、老朽化し、複雑化したレガシーシステムを未だ運用しているところも多いのです。そうしたシステムから抽出されたトランザクションデータは確かにクオリティは高くなく、プロセスマイニング分析に堪えるイベントログへと整形するための工数は嵩みます。

しかし、決して不可能ではなく、美しいプロセスモデルは描けないとしても、複雑怪奇な現行システムの概要を把握することは可能であり、プロセスマイニングを起点として、より優れた業務プロセスの設計とそれを支える業務システムの要件定義へと駒を進めていくことができます。

真実:イベントログがなんらか存在するかぎり、どんな複雑なシステムであったとしても、プロセスマイニングは実行可能です。


神話2 各種紙の書類を処理する手作業やエクセル操作など、システム上で行わない業務が多いのでプロセスマイニングは意味がない

手作業やエクセルなど、システム外で行われる業務が多いのもまた、日本企業に限ったことではありません。IT調査会社のフォレスターの最新調査によれば、欧米企業の実に7割が業務においてなんらかの手作業を行っていると回答しています。

紙の伝票処理など、手作業部分はデジタルデータとして捕捉ができず、プロセスマイニングではもちろん分析対象とはできません。エクセルなどのオフィススイートの操作も、トランザクションデータとして自動的に記録されるものではありません。

しかし、手作業はOCRなどを用いることで電子化されたり、ワークフローに組み込むことによって業務の足跡が残る割合も高くなってきました。また、エクセル操作などは、タスクマイニングによって、PC操作ログとしてデータ捕捉が可能です。

このように、デジタル化の進展によって、プロセスマイニング分析が容易に実行できる環境が整いつつあるのです。

また、手作業やPC操作が多く含まれる業務プロセスであったとしても、業務システムが活用されていれば、節目のアクティビティに基づくプロセスモデルは描写可能であり、どこに非効率性やボトルネックが存在するかを発見することは可能です。

そして、プロセスマイニングで発見された非効率な箇所、ボトルネックは、手作業やエクセル操作が行われていることが多く、プロセスマイニングの結果に基づく改善施策として、手作業の電子化やワークフローシステムによる標準化が推進されます。このことがさらにプロセスマイニング分析の有効性を高めるという良循環が発生するのです。

真実:手作業やエクセルなどの操作が含まれる業務に対するプロセスマイニングも十分な成果を導けます。


Japanese myths of Process Mining

Interest in process mining was born in Japan in late 2018. About two years have passed since then, and interest in process mining has grown even more, with an increasing number of companies, especially major corporations, introducing process mining and achieving a certain level of success.

For example, KDDI, a major telecommunications carrier, IHI, a major heavy industry company, Hitachi Transport System, a major logistics company and MISUMI, a major mold trading company, are actively using process mining, and use cases of their efforts are being reported.

However, there are not a few Japanese companies that are still skeptical about process mining, and it can be seen that there are some myths that can be called Japan-specific myths.

This article aims to debunk two myths that Japanese companies tend to hold about process mining.

Myth 1: Japanese companies’ systems are too complex to be analyzed by process mining

It is true that Japanese companies rarely adopt packages like SAP as the default, and they often perform extensive customization to match current business procedures or develop from scratch. In addition, it is not uncommon for the system configuration to be very complex and bizarre, as it has been repeatedly modified in response to changes in business operations.

For this reason, some people assume that the event log is also complex and that process mining analysis will not work. However, this is an illusion.

Many European companies, which are leading the way in the adoption of process mining, are still running legacy systems that have grown in age and complexity. The transaction data extracted from such systems is certainly not of high quality, and it takes a lot of man-hours to format the data into an event log that is suitable for process mining analysis.

However, it is not impossible, and even if it is not possible to draw a beautiful process model, it is possible to get an overview of the complexity of the current system, and, using process mining as a starting point, to design better business processes and define requirements for the supporting business system.

Reality: As long as there is some kind of event log, process mining is feasible for any complex system.


Myth 2: There are many tasks that are not performed in the system, such as manual processing of various paper documents and Excel operations, so process mining is useless.

The fact that much of the work is done outside the system, such as by hand or in Excel, is not limited to Japanese companies; a recent survey by Forrester, an IT research firm, found that a whopping 70 percent of U.S. and European companies do some kind of manual work in their operations.

The manual part, such as processing paper slips, cannot be captured as digital data and cannot be analyzed by process mining, of course. Even operations in office suites, such as Excel, are not automatically recorded as transactional data.

However, manual operations can be digitized by using OCR and other tools, or incorporated into workflows to leave a high percentage of digital footprints. In addition, Excel operations, for example, can be captured as a PC operation log or user interaction log by task mining.

Thus, with the advancement of digitalization, an environment is being created in which process mining analysis can be easily performed day by day.

In addition, even if a business process involves a lot of manual and PC operations, if the business system is used some part of it, it is possible to describe a process model based on milestone activities and discover where inefficiencies and bottlenecks exist.

And the inefficiencies and bottlenecks discovered by process mining are often manual operations or Excel operations, and as improvement measures based on the results of process mining, digitization and digitalization of manual operations and standardization through workflow systems are promoted. This creates a virtuous circle that further increases the effectiveness of process mining analysis.

Reality: Process mining for operations that involve manual operations and Excel can also lead to satisfactory results.

【速報】Gartner, Market Guide for Process Mining 2020

 米ITアドバイザリ企業Gartnerが、2020年版となる『Market Guide for Process Mining』を2020年9月30日に公開しました。

当記事では主なポイントを速報としてお伝えします。

最新版では、プロセスマイニングができること(Capabilities)がバージョンアップされています。具体的には以下の10個です。これらは、各種プロセスマイニングツールがおおむね提供している、あるいは今後提供を目指していると思われる機能とも言えます。


・プロセス、例外処理、案件、そして従業員の関わりについて自動的にモデル(フロー図など)を作成

・カスタマーとのやりとり、カスタマージャーニーを自動的にモデル化すること、および関連分析

・適合性検査、およびギャップ分析

・プロセスモデルの強化(改善)のための追加的分析(属性を付加した分析)

・データ前処理、データクレンジング、ビッグデータへの対応

・意思決定支援を可能にする、KPIの継続的モニタリングのためのリアルタイムダッシュボード

・予測的分析、処方的分析、シナリオ検証、シミュレーション

・プロセスマイニングアプリケーションを作成できるAPIを提供し、また高度な分析と意思決定支援が行える、様々なプロセスにまたがるプロセスマイニング分析のプラットフォーム

・様々な異なるプロセス間のやり取りや、それら複数のプロセスが同じワークステーションや職場、デスクトップPCでどのように実行されているかの分析

・ユーザーインタラクションログ(PC操作ログ)に基づくタスクマイニング分析


また、Gartnerは、プロセスマイニングが採用されるメインドライバーとして以下の4つを挙げています。

・デジタルトランスフォーメーション – Digital Transformation

・人工知能(AI) – Artificial Intelligence

・タスクオートメーション – Task Automation

・ハイパーオートメーション – Hyperautomation

ハイパーオートメーションとは、ひらたく言えば、RPAなどを用いたタスクオートメーション、ワークフローやiBPMSによるプロセスオートメーション、そしてDigitalOpsによる業務オペレーション全体の自動化をチャットボット、スマーとスピーカー、AI、機械学習などの様々なテクノロジーも組み込みながら実現していこうとするものです。


標準的なプロセスマイニングのユースケースとしては以下の5つが挙げられています。なお、アルゴリズムとは、イベントログからプロセスモデルを自動的に描くために、プロセスマイニングツールに組み込まれているものです。

・アルゴリズムによるプロセス発見、分析によるプロセスの改善

・アルゴリズムによるプロセスの比較、分析、検証による監査、コンプライアンスの改善

・自動化の機会の発見と検証によるプロセス自動化の改善

・戦略と業務を結びつけ、柔軟な組織を生み出すことによる、デジタルトランスフォーメーション(DX)の支援

・アルゴリズムによるITプロセスの発見と分析に基づく、IT業務のリソース最適化の改善


2020年版で示されているプロセスマイニングの代表的ベンダー・ツールは以下の20種類です。

 ABBYYTimeline
 ApromoreApromore
 BusinessOptixBusinessOptix
 CelonisCelonis Intelligent Business Cloud Platform
 Cognitive TechnologymyInvenio
 EverFlowEverFlow
 FluxiconDisco
 IntegrisExplora
 Lana LabsLANA Process Mining (Magellanic), LANA Connect (Rockhopper)
 LogpickrLogpickr Process Explorer 360
 MEHRWERKMEHRWERK ProcessMining (MPM)
 MinitMinit
 Process Analytics Factory (PAF)PAFnow
 Process Mining Groups at TUE and RWTHProM, ProM Lite, RapidProM, PM4Py
 Puzzle DataProDiscovery
 QPR SoftwareQPR ProcessAnalyzer
 SignavioSignavio Process Intelligence
 Software AGARIS Process Mining
 StereoLOGICStereoLOGIC 2020
 UiPathUiPath Process Mining, UiPath Task Mining

レポート内容詳細は、『Market Guide for Process Mining』の原文を参照ください。

Robidium – Robotic Process Mining Tool – PC操作ログから定型業務を抽出し、RPAスクリプトを自動記述

robidium toppage

Robidium – Robotic Process Mining Tool

「Robidium」は2020年9月にリリースされたRobotc Process Mining Toolです。

「Robotic Process Mining(RPM)」をご存じの方はまだ少ないでしょう。RPMは、タスクマイニングツールの一種です。

タスクマイニングは、PC操作ログ、すなわち、ブラウザーやエクセルなどを利用したPC作業を詳細に収集・記録し、個人単位での「タスク手順」を見える化してくれるソリューション。一般に、タスクマイニングの基本機能は、PC操作ログの収集からタスク手順の見える化までです。

しかし、RPMでは、さらに定型業務(ルーティンワーク)を自動的に抽出し、さらにそれをRPAのスクリプトとして記述してくれます。ソフトウェアロボットによる定型業務自動化までをカバーしてくれるので「Robotic Process Mining」と呼んでいます。

さて、RPMツール、「Robidium」による、PC操作ログの収集からRPAスクリプトの記述までの全体像は下図の通りです。

Source: Robidium Presentation

Source: Robidium Presentation


PC操作ログは、英語では、「UI(User Interaction)ログ」と呼ぶのが一般的です。ユーザーが、情報システム(PC上のアプリケーション)を操作する作業を詳細に記録します。(上図には記載ありませんが、ログ収集の対象となるPCにUIログ収集用のセンサー「RPA_UILogger」のインストールが必要です)

蓄積したUIログに対して分析を行い、ログの中から定型業務と想定される手順を自動的に抽出してくれます。(分析する前に、UIログデータのクリーニングのため、重複した業務などのノイズをフィルタリングしてくれる機能が別途あります)

自動的に抽出された定型業務のうち、RPAによる業務自動化が適切と考えられるものについては、RPAスクリプト(現在はUiPathのみ)を自動記述します。

RPAスクリプトが作成されたら、RPA(UiPath)でスクリプトを展開し、対象となった定型業務の流れが間違いなく実行されるかを検証した上で実装する。

以上ご説明したように、Robidiumでは以上のような手順でPC操作ログの収集からRPAロボット実装までの手順を支援してくれるツールであり、まだまだ技術的な課題があるものの、今後の普及が期待されます。

Robidiumのクラウドバージョンは現在無料でトライアルできます。

http://robidium.cloud.ut.ee/

以下、Robiduimの主な流れを示します。


Robidiumのトップページ

トライアル用のサンプルデータはトップページからダウンロードです。


データ前処理済のUIログをアップロードします。

*前処理機能は未提供

robidium interface log upload

パラメターの設定を行い、「IDENTIFY ROUTINES」を押下して分析を実行します。

robidium interface identify routines

定型業務(Routine)が4つ抽出されました。

robidium routine selection

定型業務の詳細手順を確認します。

robiduim interface routine detailes

RPAスクリプトを作成したい定型業務を選択し、「GENERATE SCRIPT」を押下するとスクリプトが作成されますので新規ファイルとして保存します。

robidium interface generate script

UiPathから上記スクリプトを展開します。以下はスクリプトの中身です。

uipath script

この後は、RPAツールでの作業となります。

HFS Top 10 Process Intelligence Products 2020 – プロセスマイニングツールトップ10 (2020)

HFS report on Top 10 Process Intelligence Products

米ITサービス調査会社大手のHFS Researchが、2020年9月、「HFS Top 10 Process Intelligence Products 2020」と題したレポートを発行しました。

HFSでは、40人を超える業界のリーダーたちにインタビューを行い、有望なプロセスインテリジェンス製品として14製品を選出しました。そして、大きくは、「革新(Innovation)」、「実行(Execution)」、「顧客の「声(Voice of the customer)」の3つの切り口で14製品を評価し、ランク付けを行いトップ10を決定しています。

総合評価ランキングは以下の通りです。

1位 Celonis

2位 minit

3位 Fotress IQ

4位 UiPath

5位 KRYON

6位 pafnow

7位 LANA

8位 myInvenio

9位 QPR

10位 ABBYY Timeline

HFSにおける「プロセスインテリジェンス」は、プロセスマイニング、およびタスクマイニングの両方のソリューションを含んでいます。上記トップ10ベンダーのうち、「Fortress IQ」、および「KRYON」は、タスクマイニングソリューションです。

上記プロセスマイニングベンダーのうち、CelonisやmyInvenioは、タスクマイニング機能の拡張を行っています。他のベンダーでも、タスクマイニング機能の拡張を図っているところがあります。

当レポートの詳細はHFSのサイトを参照ください!

→ https://www.hfsresearch.com/research/hfs-top-ten-process-intelligence-products-2020/

ランキング表はこちらから閲覧できます。

プロセスマイニングとタスクマイニングの違い – 早わかり一覧表

difference in Approach between pm and tm

Difference between Process Mining and Task Mining – table for easy understanding.

業務プロセス改善のための分析手法である、「プロセスマイニング」と「タスクマイニング」の違いについて簡単にご理解いただけるよう、早わかり一覧表を作成しました。

より詳しくご理解されたい方はお問い合わせください!

difference between processmining and taskmining

なお、基本的にどちらも業務プロセスを分析対象としますが、プロセスマイニングがマクロなアプローチ、言い換えると鳥瞰的視点(Bird’s eye view)で業務の流れをざっくり把握するのに対し、タスクマイニングはミクロなアプローチ、すなわち詳細な業務手順を虫メガネで覗くような蟻観(ぎかん)的視点(Ants’ eye view)で把握するという根本的な違いがあり、両者を補完的に活用することが望ましいでしょう。

approach

ビジネスプロセス治療法

how to cure bad process

How to cure a process with problems
English follows Japanese. Before proofread.

今回は、プロセスマイニングを活用して、ビジネスプロセスを改善する流れを病院での治療の手順と対照させながら説明します。

プロセスマイニングは、イベントログデータから、見えなかったビジネスプロセスを可視化することで、プロセスに潜む様々な課題・問題を発見することを目的としています。

この「プロセスを可視化する」という点から、プロセスマイニングはしばしばX-ray、すなわちレントゲンに例えられます。ただ、病気の治療と同様、病巣(課題・問題)を発見して終わりではなく、適切な治療(改善施策)を施し、健康な状態に戻す、すなわち改善された「理想プロセス」を実現することが最終目的です。

では、まず病院における医療活動の流れを概説しましょう。大きくは、「診断ステージ」と「治療ステージ」の2段階に分けています。


医療活動

診断ステージ

患 者

発熱、咳などなんらかの症状を抱えた患者の来院が治療の起点となります。

問 診

まずは、現在の症状の程度などについて質問し問診を行います。

レントゲン

X-ray機器を用いて、病巣が存在すると思われる箇所を撮影します。

レントゲン写真

X-ray写真を見ながら、病巣の有無を確認します。

診 断

X-ray写真の結果から、どのような病気に罹患しているか判断します。

身体診査

さらに、さまざまな検査を行い、上記診断結果が正しいかを検証します。


治療ステージ

治療方針

診断結果に基づき、また患者の意向も踏まえて治療方針を行います。たとえば、外科手術を実施するか、薬物治療をどのように行うか、などについてです。

手 術

病巣を除去するほうが良い場合、手術を行います。

医薬品

医薬品だけ、また手術と併せて医薬品を投与して治療を行います。

治 癒

病因が除去され、症状がなくなりました。治療完了です。


次に、上記病院での診断・治療の流れに沿って、ビジネスプロセス改善の手順を概説します。


ビジネスプロセス改善

現状把握 - 診断ステージ

問題プロセス - 患者

スループットが長い、運営コストが高い、顧客からの苦情が寄せられている、など、なんらかの現象としての問題が発生しているプロセスを改善すべき対象として選択します。

プロセスセットアップ - 問診

プロセスの概要、処理件数、担当部署・担当者など、改善対象プロセスに関わる基本情報を主にインタビューを通じて整理します。プロセスに関わるシステムの仕様書やマニュアルなどがあれば、それらも併せて内容を確認します。

プロセスマイニング - X-ray(レントゲン)

改善対象プロセスのイベントログデータを元にプロセスマイニングツールを用いて分析を行い、現状プロセスのフローチャートを作成します。

現状プロセス - X-ray写真(レントゲン写真)

現状プロセスについて、頻度別、所要時間別など様々な切り口での分析を行います。

問題・課題発見 - 診断

上記分析結果から、現象としての問題・課題を引き起こしている箇所、すなわち、時間がかかりすぎている非効率な手順や、待ち案件が積みあがっているボトルネックなどを特定します。

現場インタビュー・観察 - 身体診査

特定した問題箇所について、現場の担当者に対するインタビューや観察調査などを行い、根本原因の究明を図ります。

プロセスの非効率性やボトルネックを発生させている根本原因としては、あまり意味のない手順が多い、ミスが多く、やり直しをするケースが多い、処理すべき案件にたいしてアサインされている担当者数が少ない、などがあります。


改善活動 - 治療ステージ

改善方針 - 治療方針

プロセスに関わる様々な問題・課題、それらを引き起こしている根本原因が判明したら、改善施策を立案します。

大きな改善方針としてはまず、スループットを短縮する、コストを削減する、顧客満足度を向上する、など目的を明確化することが重要です。

改善施策実行 - 手術・医薬品

改善施策には大掛かりなものからちょっとした修正まで様々な選択肢がありえます。

ゼロベースでプロセスを組みなおすようなBPR(Business Process Re-engineering)は、外科手術にたとえることができるでしょう。マニュアルの業務をRPAのソフトウェアロボットに代替するのは、人工心臓に取り換えるようなものと言えるかもしれません。

ちょっとした手順の変更を行うだけで所要時間が改善できるとしたら、それはシンプルな薬物療法で治療できる病気だったとなるでしょう。

改善プロセス ー 治癒

有効な改善施策を展開した結果、望ましいプロセスが実現できたらひとまずプロジェクト完了です。


病気の治療において、定期検診が必要なように、問題が再発しないか、新たな問題が発生しないか、継続的に対象プロセスを監視することが必要です。


How to cure a process with problems

In this article, I’ll explain the flow of using process mining to improve business processes, contrasting it with the procedure of treatment in a hospital.

Process mining aims to discover various issues and problems hidden in the process by visualizing invisible business processes from the event log data.

In terms of this “visualization of the process”, process mining is often likened to an X-ray. However, just as in the treatment of diseases, the ultimate goal is not the discovery of the lesion (Inefficiencies and bottlenecks) but the implementation of appropriate treatment (improvement measures) and the return to a healthy state, in other words, the realization of an improved “ideal process(to be proess)”.

Let’s start by outlining the flow of medical activities in a hospital. Broadly speaking, there are two stages: the “diagnostic stage” and the “treatment stage”.


●Medical activities

Diagnostic stage

Patient

The starting point for treatment is when a patient comes in with some kind of symptom such as fever or cough.

Preliminary interview

First, we will ask questions about the extent of your current symptoms and conduct an interview.

X-rays

Using an X-ray machine, the area where the lesion is thought to exist will be photographed.

x-ray photograph

The presence of the lesion is confirmed by looking at the X-ray photograph.

Diagnosis

From the results of the X-ray photos, you can determine what diseases the patient have.

Physical examination

In addition, various physical exam and tests will be performed to verify the correctness of the above diagnosis.


●Treatment Stage

Treatment policy

The course of treatment is based on the results of the diagnosis and the patient’s wishes. For example, it’s about whether to carry out surgery or how to treat medication.

Surgery

If it is better to remove the lesion, surgery will be performed.

Medication

The treatment is performed by administering medications alone or in conjunction with surgery.

Recovery

The etiology has been eliminated and the symptoms are gone. Treatment is complete.


Next, we’ll outline the steps to improve business processes along the path of diagnosis and treatment at the above hospital.


●Business Process Improvement

Understanding the current situation – Diagnostic stage

Process with problems – Patient

Select processes that are experiencing problems as phenomena, such as long throughput, high operating costs, customer complaints, etc., as targets for improvement.

Process Setup – Preliminary interview

Basic information related to the process to be improved, such as an overview of the process, the number of processes, and the department or person in charge, will be organized through interviews. If there are any specifications or manuals for the system involved in the process, check them as well.

Process Mining – X-ray

Based on the event log data of the process to be improved, we analyze it using a process mining tool and create a flowchart of the current process.

As is process – X-ray photograph

We analyze the current process from various perspectives, such as frequency and time required.

Problem identification – Diagnosis

Based on the results of the above analysis, we identify the areas that are causing problems or issues as a phenomenon, i.e. inefficient procedures that are taking too long, or bottlenecks that are piling up pending cases.

On-site interview and observation – physical examination

To identify the problem areas, we conduct interviews with the person in charge at the site and conduct observational surveys to identify the root cause.

The root causes of process inefficiencies and bottlenecks are: too many meaningless steps, too many mistakes, too many reworkings, and too few people assigned to deals that need to be done.


Improvement Activities – Treatment Stage

Improvement Policy – Treatment Policy

Once we have identified the various problems and issues related to the process and the root causes of these problems and issues, we plan improvement measures.

As a major improvement policy, it is important to first clarify the objectives, such as reducing throughput, reducing costs, and improving customer satisfaction.

Implementation of improvement measures – Surgery and Medication

There are a variety of options for improvement measures, ranging from major to minor modifications.

BPR (Business Process Re-engineering), which is a zero-based re-engineering of the process, can be compared to surgery. Replacing manual tasks with RPA software robots might be like replacing an artificial heart.

If a small change in procedure could improve the time required, it would be a disease that could be treated with simple medication.

Improved Process (To be process) – Recovery

Once the desired process has been achieved as a result of effective improvement measures, the project is complete.


Just as regular check-ups are necessary in the treatment of a disease, it is important to continuously monitor the target process to ensure that problems do not recur or new problems arise.

プロセス再設計 – 9つの経験則

heuristic process redesign

Heuristic Process Redesign – Basic 9 Approaches
English follows Japanese. Before proofread.

プロセスマイニングやタスクマイニングで、分析対象プロセスにおける非効率なプロセスやボトルネックを発見できた。しかし、そこで完了ではありませんよね。

言うまでもなく、プロセスマイニングやタスクマイニングは、データ分析を通じて問題点を容易にあぶりだすことができますが、「こうすれば問題を解決できる」という改善施策を教えてくれるわけではありません。(将来的には、プロセスマイニングツールに高度なAI機能が実装され、改善施策のヒントを示唆してくれる、という可能性はあります)

したがって、プロセスに関わる問題点を発見できたら、プロセスマイニング、タスクマイニングの出番はいったん終了となります。

問題点発見後に活躍するのは、リーン・シックスシグマを始めとする問題解決手法です。問題解決手法では、5WHYや要因分析(魚の骨分析)などの各種フレームワークを用いて、問題の背景にある根本原因を探るとともに、具体的な改善施策を立案、実行します。

当記事では、具体的な改善施策を検討するために参考になる9つの再設計手法をご紹介します。これら再設計手法はBPM(Business Process Management)において体系化されたものです。過去に数多く実施されたプロセス改善プロジェクトを通じて経験則的に編み出された実践的な手法です。

なお、実はプロセス再設計の経験則は30個近くあります。うち、今回ご紹介する9つの手法は最も一般的で改善効果が出やすいものです。

なお、9つのプロセス再設計法は、大きくは3つのレベル(タスクレベル、フローレベル)、プロセスレベル)に分類することができます。各手法の解説は3つのレベルごとに行っていきます。

タスクレベル

プロセスを構成する個々のタスク(アクティビティ)についてなんらかの変更行うものです。

1 タスク除去

所要時間が長い要因となっているタスクについて、そもそもそのタスクはやる価値があるのか、いっそなくしてしまう、あるいは回数を減らすものです。

例えば、承認タスクが3段階あり、形骸化している場合、1段階減らして2段階のタスクにする。また、検品プロセスで、全品に対して検査を行うのではなく、無作為抽出した一部の製品のみの検査を行う統計的方法に変えることで、検査タスク件数を数分の一に減らす、といったことが考えられます。

2 タスク結合

タスクが細かく細分化されていたり、複数の部署間でタスクの受け渡しが発生していると、所要時間が長くなりがちです。したがって、複数に分かれているタスクを1つのタスクで統合してしまう、他部署にタスクを渡さないで自部署でまとめてタスクをやってしまう、といったタスク統合が有効な場合があります。(逆に、複数の作業が一つのタスクにまとまっていることで非効率になることもあります。その場合は、タスクを分解することが有効な場合もあります)

3 トリアージュ(区分け)

あるプロセスに、条件分岐でサブプロセスを走らせたほうが所要時間が短縮できる場合があります。たとえば、調達プロセスで購買申請受付に続くタスクとして、金額が1千万円以上、以下で異なるプロセスを走らせるといった方法です。

逆に、サブプロセスが多すぎることによって複雑化している場合には、いくつかのサブプロセスを統合することも検討すべきでしょう。


フローレベル

タスク単体ではなく、タスクとタスクの順序についての改善手法です。

4 再配列

タスクの流れを見直し、最も効率的で、また作業量が最小となるような順番に組みなおすのが再配列です。

例えば、調達プロセスにおいて、AとBの2つの承認タスクが含まれている場合に、Aのタスクでは平均1%が差戻しとなり、Bのタスクでは10%が差し戻しになるとします。この場合、より多くの差戻しが発生するBのタスクをAのタスクの前にもってきたほうが、Aの承認件数が相対的に減少し、全体としてはより効率的、作業量を減らすことが可能となります。

5 並行処理強化

あるプロセスにおいて、前のタスクが終了して初めて次のタスクが始まるという逐次処理が行われている場合に、逐次ではなく、並行して複数のタスクを処理するプロセスに変更すれば、プロセス全体の所要時間の短縮が見込めます。

逐次処理タスクを並行処理に変更することはしばしばスループット短縮に大きな効果があります。


プロセスレベル

個々のタスク、タスク間の順序以外に、別の視点も踏まえた改善を行うものです。

6 専門化と標準化

専門化は、あるプロセスを複数のサブプロセスに分けて、それぞれに担当者を割り当てて専門性を高めてもらうことで効率化や顧客満足向上などを目指すものです、例えば、VIPと一般客に分けて、特にVIPに対してはスピーディで丁寧なサービスプロセスを提供するようなものです。

逆に、標準化は、製品別などで分かれているために同一の業務なのに複数のプロセスが存在している場合に一本化を図るものです。

7 リソース最適化

同じ業務プロセスを複数の担当者で遂行している場合に、特定の担当者に業務量が集中し、他の担当者が遊んでしまっているといった状況、あるいは、業務量に対して担当者が少ないために待ち業務が積みあがってボトルネックになっている、といった問題点に対しては、担当者の割り当てを工夫する、担当者のシフトを見直すなどの「リソース最適化」が必要となります。

8 コミュニケーション最適化

プロセスの流れが、電話やFAX、メールなど、なんらかのコミュニケーションをきっかけに駆動する場合、例えばコミュニケーションを受けるタイミング、処理するタイミングなどを変更することで、効率化や顧客満足が向上できる場合があります。

9 自動化

明確な一定の手順が存在する定型業務の場合はRPAによる自動化が有効となるでしょう。また、インプットされた情報に基づいて自動判定するようなアプリケーションを開発するなど、自動化の選択肢も複数あります。

heuristic process redesign

自社のプロセス改善・改革プロジェクト、あるいはDX(Digital Transformation)推進プロジェクトにおいて、個々の問題・課題に対する解決策を導く場合に、まずはこれら9つの経験則が適用できないか検討してみましょう。

なお、冒頭で述べたように、プロセス再設計の経験則は、『Fundamentals of Business Process Management』では29個紹介されています。

また、同書に準拠したMOOC(eラーニング)では、今回ご紹介した9つのプロセス再設計方法について詳しく解説されていますのでぜひご覧になってみてください。

(Resources)

Fundamentals of Business Process Management, Second Edition
Marlon Dumas, Marcello La Rosa, Jan Mendling, Hajo A. Reijers

MOOCs – Fundamentals of BPM


Heuristic Process Redesign – Basic 9 Approaches 

Thanks to process mining and task mining, you are able to find inefficient processes and bottlenecks in the process. But that’s not where it’s done, is it?

Needless to say, process mining and task mining make it easy to uncover problems through data analysis, but they don’t tell you how you can solve problems. (It’s plausible that in the future, advanced AI capabilities will be added in process mining tools to hint at ways to improve them.

Therefore, once a problem related to the process has been found, the process mining and task mining are no longer needed for the time being.

What comes into play after finding a problem is problem-solving techniques, including Lean Six Sigma. In those problem-solving methods, you can use various frameworks such as 5WHY and factor analysis (fish bone analysis) to find the root cause behind the problem, and then plan and implement specific improvement measures.

This article introduces nine redesign methods that can be used as a reference to consider specific improvement measures. These redesign methods are systematized in BPM (Business Process Management). This is a practical method that has been developed empirically through numerous process improvement projects that have been implemented in the past.

In fact, there are nearly 30 rules of thumb for process redesign. Of these, the nine methods I’m going to share with you are the most common and most likely to produce improvements.

The nine process redesign methods can be broadly categorized into three levels (task level, flow level) and process level). Each method will be explained at each of the three levels.

TASK Level

This is a change of any kind to the individual tasks (activities) that make up the process.

1 Task Elimination

For those tasks that are taking a long time, it’s important to ask yourself if the task is worth doing in the first place, eliminate it, or reduce the number of times you do it.

For example, if there are three levels of approval tasks and they are formidable, reduce them by one level to two. In the inspection process, the number of inspection tasks could be reduced by a fraction of a percent by changing to a statistical method that only inspects a small portion of randomly selected products, rather than inspecting all products.

2 Task composition (decomposition)

When tasks are subdivided into smaller chunks, or when tasks are passed between multiple departments, the time required is often longer. Therefore, it may be effective to consolidate multiple tasks into a single task, or to consolidate tasks in your own department without passing them on to other departments. (Conversely, multiple tasks can become inefficient when they are combined into a single task. (In that case, it may be useful to break down the task).

3 Triage

In some cases, running sub-processes in a conditional branch may reduce the time required for a process. For example, in the procurement process, a task following the receipt of a purchase application would be to run different processes for amounts over 10 million and below.

Conversely, if the complexity is compounded by too many sub-processes, you may want to consider consolidating some of them.


FLOW level

It’s an improvement method for the order of tasks, not just a single task.

4 Re-sequencing

Re-sequencing is about reviewing the flow of tasks and rearranging them in the order that is most efficient and requires the least amount of work.

For example, if the procurement process includes two approval tasks, A and B, then on average 1% of the A task will be set back and 10% of the B task will be set back. In this case, bringing task B, which has more regressions, before task A will result in a relative decrease in the number of approvals for A, which will be more efficient and reduce the workload overall.

5 Parallelism enhancement

In some processes, where sequential processing is used, where the next task starts only after the previous task is completed, if the process is changed to one where multiple tasks are processed in parallel instead of sequentially, it is expected to reduce the time required for the entire process.

Changing sequential processing tasks to concurrent processing often has a significant effect on throughput reduction.


PROCESS level

It is an improvement based on another perspective besides the individual tasks and the order between them.

6 Specialization and standardization

Specialization aims to improve efficiency and customer satisfaction by dividing a process into multiple processes and assigning a person in charge to each sub-process to increase the expertise. For example, it is possible to divide a process into VIPs and general customers and provide a speedy and courteous service process especially for VIPs.

On the contrary, standardization is an attempt to unify multiple processes in the case of the same business because they are separated by product, etc.

7 Resource Optimization

When multiple people are running the same business process, the amount of work is concentrated on a particular person while other people are playing around, or when there is a bottleneck due to the lack of people in charge of the same amount of work, it is necessary to “optimize resources” by devising the assignment of people in charge or reviewing the shifts of people in charge.

8 Communication Optimization

If the process flow is driven by some kind of communication, such as a phone call, fax, or email, you may be able to improve efficiency and customer satisfaction by changing the timing of receiving or processing communication, for example.

9 Automation

For routine tasks where there is a clear set of procedures, automation with RPA can be effective. There are also multiple options for automation, such as developing an application that makes automatic decisions based on the input information.

Let’s first consider whether these nine rules of thumb can be applied to your own process improvement/innovation project or DX (Digital Transformation) promotion project when guiding a solution to an individual problem or issue.

As mentioned at the beginning, 29 rules of thumb for process redesign are presented in the “Fundamentals of Business Process Management”.

In addition, please take a look at the MOOCs (e-learning), which is based on the book, for detailed explanations of the nine process redesign methods introduced in the book.

(Resources)

Fundamentals of Business Process Management, Second Edition
Marlon Dumas, Marcello La Rosa, Jan Mendling, Hajo A. Reijers

MOOCs – Fundamentals of BPM

プロセスマイニング料理法

process mining how to cook

Process Mining: How to Cook
English follows Japanese. Before proofread.

プロセスマイニングは、「分析手法」です。プロセスマイニングツールを導入しただけではなにも始まりません。「分析プロジェクト」として一連の手順を企画し、実行管理を行う必要があります。

ただ、過去になんらかの調査や分析プロジェクトを行ったことがないと、分析プロジェクトの手順を理解するのは簡単ではないようです。そこで、プロセスマイニング分析の流れを料理の流れにみたてて解説してみたいと思います。

まず、料理の流れを確認します。場所の想定はレストランの厨房です。最初の活動は「食材仕入れ」、最後は、盛り付けてお客さまのテーブルに配膳する活動としています。

料理の流れ

1 食材仕入れ

食品卸業者などを通じて、各地から様々な食材を仕入れます。

2 食材

食材が揃いました。虫が食っていないか、腐ってないかなど確認します。

3 下準備

包丁で食材を切り刻んだり、鍋で沸かしたお湯でゆがいて苦みを取るなどの下ごしらえを行います。

4 調理

様々な調理器具を用いて食材を調理します。

5 盛り付け・配膳

出来上がった料理を見た目良く盛り付け、お客さまに提供します。

なお、このレストランでの料理全体をとりしきるのがマスターシェフの役割です。


次に、プロセスマイニング分析の手順を上記各調理手順と対応させてながら解説しましょう。

プロセスマイニング手順

1 データ抽出 = 食材仕入れ

SAPに代表されるERPや、SalesforceなどのCRMシステム、あるいは独自開発の業務システムなど、分析対象データとなるイベントログが記録・蓄積されている各種システムからデータを抽出します。

データの抽出方法としては、SQLによってDBから直接データを抜くことが一般的です。

データ抽出作業は基本的に、システムエンジニア、あるいはシステム管理者が行います。ERPのようにデータベース構造が複雑な場合、分析対象データがどこに所在しているかを見極める必要があるため、例えばSAPを熟視したSAPの専門家の支援を受けます。

2 分析対象データ = 食材

システムから抽出されたデータは、総称して「イベントログ」と呼ばれます。システム上での操作履歴をイベント単位でタイムスタンプと共に記録されたものだからです。

データフォーマットとしてはCSVで提供してもらえると、後工程のデータ前処理が楽になります。場合によっては、JSON形式のまま提供されることもあります。JSON形式のイベントログですと、前処理がちょっと面倒になります。

3 データ前処理 = 下準備

システムから抽出されたイベントログデータは、多くの場合、10本以上の複数のファイルから構成されています。操作履歴となるアクティビティとタイムスタンプ等が記録されているファイル、またマスターデータが含まれたファイルなどです。

次工程の分析を行うためには、基本的にはすべてのファイルを統合して1本のファイルに仕立てる必要があります。また、元ファイルには、文字化けしている箇所や、本来なんらかの値が入っているはずのセルが空白であるなど、そのままでは分析できないデータが多数含まれています。

そこで、ノイズ的なデータは除去する、補正するなど、料理のあく抜きと同様のデータクリーニングなどを行う必要があります。こうした、元データを分析可能なクリーンなデータに加工する工程がデータ前処理です。

データ前処理は、データをどのように処理すればクリーンになるかを熟知したデータサイエンティストが、ETLツールやPythonなどを駆使して行います。

4 分析 = 調理

データ前処理によって下ごしらえが済み、分析可能なクリーンデータができたら、ようやくプロセスマイニングツールに投入し、様々な分析が可能となります。

プロセスマイニングツールは非常に多機能なツールです。使いこなせるようになるには相応のトレーニングと経験が必要ですが、数字の羅列にしか見えないイベントログデータから、業務プロセスがフローチャートとして視覚化され、非効率であったりボトルネックであったりする箇所をあぶりだすのは楽しい作業です。

プロセスマイニングツールによる分析は、なにより使用するツールを熟知したツールの専門家が必要ですが、どのように分析を行うか、という分析視点を与えるのはプロセスアナリストです。また、データサイエンティストも、データの前処理を通じて、元データについての理解を深めていますので、分析作業の支援を行うことができます。

5 レポーティング = 盛り付け・配膳

プロセスマイニングツールでの様々な分析結果から判明した、対象プロセスの課題や問題点についてグラフ、表などを活用しながらレポートを作成します。レポートを提出する関係者は必ずしもデータ分析に慣れているわけではありませんので、なにが課題・問題なのかを容易に理解できるようなビジュアル表現に留意する必要があります。

レポート作成を担当するのは、プロセスアナリスト中心に、プロセス改善のノウハウ(リーン、シックスシグマなど)を持つつプロセスコンサルタントの支援も受けるのが理想です。必要に応じて追加分析を行うこともありますので、データサイエンティスト、ツールエキスパートのサポートもあるといいでしょう。

プロセスマイニング分析のプロジェクト全体を取り仕切る、レストランのマスターシェフに該当するのは、プロジェクトマネージャーです。プロジェクトマネージャーは、すべての工程を熟知している必要はありません。しかし、各工程の概要は理解していることと、なによりプロジェクトを円滑に遂行するスキルが求められます。

以上、料理の比喩を用いて、プロセスマイニング分析の標準的な手順をご説明しました。各工程とも、相応のスキルと経験が求められる難度の高い作業ではありますので、各分野のエキスパートがうまく連携してプロジェクトを進めていくことが求められます。


Process Mining: How to Cook

Process mining is an “analytical method”. The mere introduction of a process mining tool doesn’t start anything. You will need to plan a series of steps as an “analytical project” and manage their execution.

However, if you have not done any research or analysis projects in the past, it does not seem to be easy to understand the steps of an analysis project. Therefore, I would like to explain the flow of process mining analysis by contrasting the flow of cooking.

First, let’s see the flow of the food. The assumed location is the kitchen of a restaurant. The first activity is “purchasing foodstuff” and the last is serving dished-up food to customers’ tables.

COOKING FLOW

1 Purchase of foodstuffs

purchase a variety of food from all over the world through food wholesalers.

2 Foodstuff

The foods to be cooked are now available. Check to see if there are any insects eating or rotting.

3 Precooking

prepare the food by chopping it with a knife or boiling it in a pot of boiling water to remove the bitterness.

4 Cooking

Cooks food using a variety of cooking utensils.

5 dishing-up and serving

dish up cooked foods and serve the finished dishes to the customers.

Role of Master Chef

Note that the role of the master chef is to oversee the entire cooking process of the restaurant.


Next, let’s explain the steps of the process mining analysis, corresponding to the above cooking steps.

process mining procedure

1 Extraction of data = Purchase of foodstuff

extract data from various systems that record and accumulate event logs that are the target data for analysis, such as ERP represented by SAP, CRM systems such as Salesforce, or proprietary business systems.

As a method of data extraction, it is common to extract data directly from a DB by SQL.

Data extraction is basically done by system engineers or system administrators, and when the database structure is complex, such as ERP, it is necessary to determine where the data to be analyzed is located, for example, with the assistance of SAP experts who have good knowledge about SAP.

2 Data to be analyzed = Foodstuff

The data extracted from the system is collectively referred to as the “event log. This is because the history of operations on the system is recorded on an event-by-event basis with a time stamp.

As a data format, it would be easier to pre-process the data in the post-process if it were provided in CSV format. In some cases, the event log may be provided in JSON format and the pre-processing of the event log in JSON format can be a bit cumbersome.

3 Data preparation = Precooking

The event log data extracted from the system is often composed of multiple files, often ten or more. It can be a file that records activity and time stamps, etc., as well as a file that contains the master data.

Basically, all the files must be combined into a single file in order to analyze by a process mining tool. In addition, the original files contain a lot of data that cannot be analyzed as it is, such as garbled parts and empty cells that should have contained some kind of value.

Therefore, it is necessary to remove or adjust for those noisy data, that is, perform data cleaning similar to the removal of unfavorable parts of food. Data preparation is the process of processing the original data into clean data that can be analyzed by a process mining tool

Data preparetaion is done by data scientists who know how to process data to make it clean, using ETL tools, Python, and other tools, languages.

4 Analysis = Cooking

Once the data has been pre-processed and the clean data is ready for analysis, it can finally be fed into process mining tools for various analyses.

The process mining tool is a very versatile tool. It takes some training and experience to become proficient, but it’s fun to visualize business processes as a flowchart from event log data that looks like nothing more than a litany of numbers to uncover inefficiencies and bottlenecks.

Analysis with process mining tools requires tool experts who are familiar with the tools used, but it is the process analyst who gives the analytical perspective on how to do the analysis. The data scientist also has a better understanding of the original data through pre-processing of the data, so they can assist in the analytical work.

5 Reporting = Dishing up and serving

create reports using graphs, tables, etc. on the issues and problems of the target process identified from various analysis results with process mining tools. Since the people receiving the report are not necessarily familiar with data analysis, it is necessary to keep in mind the visual presentation that makes it easy to understand what the issue or problem is.

Ideally, the report should be written by a process analyst, with the assistance of a process consultant with process improvement know-how (Lean, Six Sigma, etc.). It’s also good to have the support of a data scientist or tool expert, as additional analysis may be required.

Role of Project Manager

It is the project manager who correspond to the master chef of the restaurant who runs the entire process mining analysis project. A project manager does not have to be familiar with the entire process. However, you must have a good understanding of each step of the process and above all, you must have the skills to execute the project smoothly.

So far I have used the culinary metaphor to explain the standard procedure for process mining analysis. Each process is a highly challenging one that requires a certain level of skill and experience, so it is necessary for experts in each field to work well together to advance the project.

事業革新に取り組むための「イノベーション手法ポートフォリオ」

innovation method portfolio

Innovation method portfolio useful for business innovation

新型コロナにより、社会の在り方が大きく変化しつつあります。厳しい行動制限が解除された後の「Post Corona」の時代においても、私たちは新型コロナと折り合いをつけて生活していかざるを得ないため、「Before Corona」と同じ姿に戻ることはないでしょう。

さて、経済の担い手である企業は、あらゆる分野において急速に進展するデジタル化への対応のため、コロナ以前から「DX」、すなわちデジタル変革の推進に取り組んできました。とはいえ、旧来の慣れ親しんだやり方からの脱却は簡単ではなかった。ところが、新型コロナという非常事態によって、ほぼすべての企業が、デジタルを活用した事業革新に本腰を入れざるをえなくなりました。

今回は、事業革新に取り組むために役立つ様々な手法の位置づけについて解説します。

下図に示したのは、4つの次元で各種革新手法を位置付けたものです。「イノベーション手法ポートフォリオ」と呼ぶことにします。

横軸:内的(Internal)  ⇔ 外的(External)

横軸は「内的(Internal)」と「外的(External)」の2つです。

「内的」とは、社内のやり方、プロセス、資源などに焦点を当てるものです。一方、「外的」は、顧客や競合他社など、外部の情報を積極的に活用します。

縦軸:分析的(Analytical) ⇔ 創造的(Creative)

縦軸は「分析的(Analytical)」と、「創造的(Creative)」です。

「分析的」とは、文字通りものごとを構造的・分析的に捉えるもので、しばしば定量的なデータの活用が前提となります。

一方、「創造的」とは、ものごとを多面的に捉え、新たな価値を見出そうとするアプローチです。


それでは、4つの次元それぞれに含まれる手法について簡単に解説しましょう。(それぞれの手法の詳細な解説は各自、Google検索などでお調べください)

分析的 x 内的

現在のやり方を強化するアプローチです。ここには、TRIZ、制約理論、リーンマネジメント、シックスシグマ、BPR(Business Process Re-engineering)が含まれます。革新(Innovation)というよりは、主に改善(Improvement)のための手法です。現在の業務プロセス、業務内容を把握し、非効率性、ボトルネックなどの問題点を発見し、改善施策を講じます。組織再編も含めた、全社的に根本的な改善を行うのがBPRです。

これらのアプローチは、特にムリムダの削減による生産性向上を通じたコスト削減に効果があります。

なお、この次元において、ファクトベースでの価値ある分析手法を提供できるのが「プロセスマイニング」です。

分析的 x 外的

外部にあるよりよい方法を取り込むアプローチです。この次元には、ベンチマーキング、参照モデリングが入ります。

ベンチマーキングは基本的には、他企業の優れた取り組みと自社を比較して、劣っているポイントを明確化する取り組みです。また、参照モデリングは、自分の業界で標準的な手順、あるいは優れた手順を自社でも採用することでクイックな成果を目指します。

創造的 x 内的

社内に存在するがまだ活用されていない方法を試すことです。ここには、ポジティブな逸脱やクラウドソーシングが入ります。

ポジティブな逸脱とは、現在主流となっている事業や、人、手順ではなく、傍流にある異端的な事業や、人、手順に着目し、それを全社に展開するような取り組みです。企業内では、異端的なものはしばしばネガティブな「逸脱」と見なされてあまり評価されず、修正を求められます。しかし、こうした逸脱の中には、新たな環境変化に対応できる革新的な事業、人、手順が含まれていることがあるのはご存知でしょう。

クラウドソーシングは、外部的な要素も多分にありますが、様々な知識、知恵、経験を持つ多様な人材を社内資源と組み合わせることで、自社だけで議論していても発想できなかった新たなアイディアを創造します。

創造的x外的

自社資源に頼らず、新たな方法を創造するアプローチです。SCAMPER 、デザイン思考が含まれます。

ここでは、様々な制約を取り払ってものごとを多面的に考え、また対象顧客を注意深く観察することなどを通じて、柔軟な発想を最大限に発揮しようとします。


さて、以上のアプローチのどれが貴社にとって最適かはケースバイケースであり、一概には言えません。

ただ、ポストコロナの厳しい経済環境においてはまずコスト削減から取り組むべきであり、分析的・内的アプローチである、リーン、シックスシグマなどから事業改善をスタートさせるべきと考えます。業界標準のやり方を取り込む参照モデリング、他社の優れたところを参考にするベンチマーキングも有効でしょう。

ただし、前述したように、分析的なアプローチは現状のやり方の改善までは可能ですが、新たなビジネスモデルを生み出し、イノベーションを実現することは得意ではありません。

例えば、飲食店が、シックスシグマなどにより、来店客に対する店内オペレーションの改善にどれだけ取り組んでも、ステイホームにより高まるテイクアウト需要に応えるための新たな手順を生み出すことはできないのです。

そこで、まずは分析的アプローチで生産性の向上、コスト削減に取り組みつつ、環境変化に適応して売上を大きく伸ばすために採用すべきなのが創造的なアプローチです。

近年、デザイン思考が注目を浴びましたが、最近ではさらにクリエティブな要素が強い「アート思考」のアプローチも登場してきています。

現在のような大きな環境変化においては、事業革新、すなわちビジネスイノベーションが欠かせません。分析的アプローチで足元を固めつつ、創造的アプローチで新たなビジネスモデルを生み出すことが現在の企業には求められていると思います。

(参考文献)

From Product Innovation to Organizational Innovation – and what that has to do with Business Process Management, Jan Recker (PDF)

プロセスマイニング実践入門 – Udemy

introduction to process mining in practice udemy

INTRODUCTION TO PROCESS MINING IN PRACTICE – e-learning course on Udemy
English follows Japanese. Before proofread.

プロセスマイニングを実際に導入する際に、知っておきたい基本知識が学べるeラーニングコースをUdemyを通じてまもなく提供開始いたします。2020年5月上旬を予定しております。

受講対象者:

  • 企業や組織でプロセスマイニングの導入を担当されている方
  • プロセスマイニングの導入を支援されているコンサルタントの方
  • プロセスマイニングのエキスパートを目指したい方

コースの特徴:

プロセスマイニングの理論的側面ではなく、ビジネスへの応用を成功に導くために役立つ内容になっています。プロセスマイニングの原理を含む包括的なeラーニングコースは、プロセスマイニングのゴッドファーザー、Wil van der Aalst教授がCourseraを通じて2014年から提供されています。

しかし、特定のプロセスマイニングツールに依拠せず、また、業務プロセス改善を目的とするビジネス応用に重点を置いた実践的なeラーニングコースは、日本だけでなく世界でもまだ提供されていないことから、世界初のプロセスマイニングの実践入門講座となります。

なお、英語版も後日リリース予定です。

コース受講メリット

  • プロセスマイニングの基本的な知識が習得できます
  • プロセスマイニングの導入意義を上司など、社内関係者に効果的に伝えることができるようになります(導入担当者)
  • 見込み客に対して、プロセスマイニングの価値を説得力のある形で伝えることができるようになります(プロセスマイニングコンサルタント)

カリキュラム

  • プロセスマイニングとは?
  • プロセスマイニングの歴史
  • プロセスマイニングを必要とするビジネス環境
  • プロセスマイニングの利点・期待できるリターン
  • 分析可能なプロセス
  • 導入事例
  • プロセスマイニングと関連ソリューション(ETL, RPA, BPMs, DWH/Datalake)
  • イベントログとは?
  • プロセスマイニングアルゴリズムの原理
  • プロセスマイニングの4つのアプローチ
  • プロセス発見
  • 適合性検査
  • プロセス強化
  • 運用サポート
  • プロセスマイニングプロジェクトのマネジメント
  • タスクマイニング
  • プロセスマイニング従事者に必要なスキルセット
  • プロセスマイニングツール


INTRODUCTION TO PROCESS MINING IN PRACTICE – e-learning course on Udemy

Aalstn e-learning course through Udemy that will teach you the basic knowledge you need to know when implementing process mining, scheduled for early May 2020.

Target participants

  • Person in charge of implementing process mining in a company or organization
  • Consultants who are helping to implement process mining
  • Those who want to become an expert in process mining

Course Features

It’s not about the theoretical aspects of process mining, but more about the content that will help you successfully apply it to your business process improvement.

A comprehensive e-learning course containing process mining principles has been offered since 2014 through Coursera by the godfather of process mining, Professor Wil van der Aalst.

However, this is the world’s first practical introductory course to process mining, as it does not rely on a specific process mining tool and is not yet offered in Japan or the rest of the world as a practical e-learning course focused on business applications to improve business processes.

An English version will be released at a later date.

Benefits for participants

  • You will learn the basics of process mining from practical aspect.
  • You will be able to effectively communicate the necessity of the introduction of process mining to your supervisors and other internal stakeholders(person in charge).
  • You’ll be able to convincingly communicate the value of process mining to your prospects (Process Mining Consultant).

Curriculum

  • What is process mining?
  • History of Process Mining
  • Business environments that make process mining indispensable
  • Benefits and Expected Returns of Process Mining
  • Processes to be analyzed
  • Use cases
  • Process Mining and Related Solutions (ETL, RPA, BPMs, DWH/Datalake)
  • What is the event log?
  • Principles of Process Mining Algorithms
  • Four Approaches to Process Mining
  • process discovery
  • conformance check
  • process enhancement
  • Operational Support
  • How to manage a process mining project
  • Task Mining (Robotic Process Mining)
  • Skill sets required for process mining practitioners
  • process mining tool

  • – What is process mining – History of process mining – Business environments that make process mining indispensable – Benefits and expected returns of process mining – Target processes to be analyzed – Use cases – Process mining and related solutions(ETL, RPA, BPMs, DWH/Datalake) – What is event log – Principle of process mining algorithm – Four approaches of process mining – Process discovery – Conformance checking – Process enhancement – Operational support – How to manage a process mining project – Basics of data preparation – Task mining/Robotic process mining – Necessary skill set for a process miner – Process mining tools

タスクマイニング – 労働生産性向上のための3つの分析視点

basic analysis of task minig

Task Mining – Three Analytical Perspectives for Improving Labor Productivity.
English follows Japanese.Before proofread.

PC操作ログに基づき、ユーザー一人ひとりのPC上で遂行されたタスクを可視化するのが「タスクマイニング」です。

当記事では、タスクマイニングの基本的な分析アプローチとなる3つの分析視点を解説します。

まず、タスクマイニングを行う目的を明確にしておきましょう。それはズバリ、「労働生産性向上」です。生産性とは一般に

「産出(OUTPUT)」/投入量(INPUT)」

のことです。タスクマイニングにおける「労働生産性」は以下の式で表せます。

労働生産性=価値創出量/投入労働量

ここで、労働投入量は、一日当たりであれば一般的には8時間でしょうし、週当たり40時間、月当たり160時間が標準となります。(週休二日制の場合)。

端的に言えば、労働生産性向上とは、働いた時間で生み出す価値をより増やすことです。ポイントは、より長く働くことで価値を増やすのでなく、同じ時間で生み出す価値を増やすことを目指す点にあります。

さて、タスクマイニングでは、個々のPCにインストールされたセンサーを通じてPC操作内容を詳細に記録・蓄積できることから、労働生産性向上のために取り組むべき改善施策を検討するための分析を行うことができます。

この労働生産性の向上を目的とした分析には以下の3つの分析視点があります。

1 価値創出
2 効率性
3 改善可能性タスク

それぞれについて概説します。

1 価値創出

タスクマイニング分析の第一の視点は、業務時間のうち価値創出活動にどれだけ従事できているかです。

労働生産性の式でおわかりのように、労働とは価値を生み出すことです。「価値」は、わかりやすく言えば、売上に貢献するものです。工場労働の場合は、まさに「製品」が価値です。

オフィスでの各種事務の場合は、工場業務ほど明確ではありませんが、営業担当であれば、提案書や見積書作成は、売上をつくるために重要な価値創出活動です。どんな部署、業務であれ、なんらか価値を創出している業務時間のことは「価値創出時間」と呼びます。

一方、業務時間にYouTubeの動画を見たり、ただぼーっとしているだけの時間は価値を生み出していません。「価値非創出時間」となります。(なお、昼食、休憩時間は業務時間ではありませんので、そもそも分析対象ではありません)

労働生産性向上のためには、価値創出活動をできるだけ増やすことです。ただし、1日なら8時間という単位時間は増やさない前提です。したがって、8時間に占める価値非創出活動、要するに、いかになまけ時間・さぼり時間を減らすか、ということに取り組む必要があります。

したがって、まずは、タスクマイニングでは、業務時間を価値創出の視点で「価値創出時間」と「価値非創出時間」に仕分けしていきます。

なお、価値創出活動も2つに分けることができます。「高価値」「低価値」です。高価値は、営業担当で言えば、前述した提案書や見積書作成です。低価値な業務としては、経費精算や客先移動です。

低価値業務もできるだけ減らすことを目指したいところ。例えば、経費精算は、専用アプリなどで手順をできるだけ簡素化したり、RPAで自動化したり、またWeb会議によって移動時間をなくす、といった施策が打てます。

2 効率性

同じ価値を生み出すにしても、仕事が早い人、遅い人で時間のかかり方が違いますね。したがって、価値創出、非創出を仕分けしたら、次は価値を生み出す時間の短縮を目指す、すなわち効率性を追求します。

タスクマイニングにおいて効率性の分析を行う場合には、基準値の設定が必要となります。要するに、同じ仕事をするにしても、「高効率」、つまり仕事が早いのか、「低効率」、すなわち仕事が遅いのかは、なにか評価基準を設定しておかなければ判断できません。

この基準値は一般には、部署別や職務別での平均処理時間などを用いますが、ヒアリングによる業務分析と異なり、タスクマイニングでは、実際の「PC操作時間」というファクトに基づく分析が可能です。

3 改善可能性タスク

タスクマイニングの3つめの分析視点は、改善可能性タスクを発見することになります。前2項目(価値創出、効率性)では、業務処理時間に焦点を当てますが、改善可能性タスクは、業務の流れに着目します。

そして、なんらか改善できるのではないかと考えれられるタスクを抽出します。主な抽出対象は、「定型パターン」「多発ミス」「繰り返し」です。

「定型パターン」は、いくつかのステップが順番に行われているものです。休暇申請や出張精算などが典型的な定型パターンです。こうした手順はしばしば業務システム化されているのでプロセスマイニングでも分析が可能ですが、業務システム化されていなくとも、タスクマイニングでは発見可能です。「多発ミス」や「繰り返し」は、アプリやファイルの操作の流れの中で異常値的に発見されるもので、多くは「コピー&ペースト」が大量に含まれています。

これら改善可能性タスクに対する具体的な改善施策はケースバイケースではありますが、RPAによる自動化が最有力施策と言えるでしょう。

以上、タスクマイニングでは、「価値創出」、「効率性」、「改善可能背タスク」の3つの視点で分析を進めていくことをご説明しました。タスクマイニングでは他に、コンプライアンスに関わる違反プロセスの発見といったことも可能ですが、労働生産性向上にはさほど関係しないため、別の機会にご説明したいと思います。

basic analysis of task mining

Task Mining – Three Analytical Perspectives for Improving Labor Productivity.

Based on PC operation logs, “task mining” visualizes the tasks performed on each user’s PC.

In this article, let me explain the three analytical perspectives for task mining.

First, let’s be clear about the purpose of doing task mining. That is improving labor productivity.

Productivity is generally defined as

Output/Input

Then, the “labor productivity” in task mining can be expressed by the following formula;

Labor productivity = amount of value created/labor time(cost) spent

Here, labor input, if per day, would generally be 8 hours, and 40 hours per week and 160 hours per month would be the norm. (If you are on a two-days off per week).

In a nutshell, increased labor productivity is about creating more value with the hours worked. The point is not to increase value by working longer, but to increase the value you create in the same amount of time(cost).

Now, with task mining, PC operations can be recorded and accumulated in detail through sensors installed on individual PCs, allowing analysis to be performed in order to consider improvement measures to be taken to improve labor productivity.

This analysis aimed at improving labor productivity includes the following three analytical perspectives

1 Created Value
2 Efficiency
3 Task to be improved

I will outline one by one.

1 Created Value

The first perspective of a task mining analysis is how much of your business time is spent engaged in value-creating activities.

As you can see from the labor productivity formula, labor is about creating value. Value, to put it plainly, is what contributes directly or indirectly to sales. In the case of factory labor, it is exactly the “product” as a result of creating the value.

In the case of various types of office work, it is not as clear as factory work, but if you are in charge of sales, preparing proposals and quotations are important value creation activities to create sales. The time that any department or business is creating value in some way is called “value creation time”.

On the other hand, time spent watching YouTube videos or just zoning out during work hours is not creating value. This is “non-value creation time. (Note that lunch and break times are not included in the analysis in the first place, as they are not business hours.)

The way to improve labor productivity is to increase value-creating activities as much as possible. However, it is assumed that the unit time of 8 hours will not be increased for a day. Therefore, it is necessary to work on how to reduce the amount of non-value-creating activities, in other words, the amount of slacking and idleness in the eight hours.

Therefore, first of all, task mining classifies business time into “value creation time” and “non-value creation time” from the perspective of value creation.

Value creation activities can also be divided into two categories. They are “high value” and “low value. High value is the aforementioned proposal and quotation writing, if you’re a salesperson. Low-value tasks include such as expense reimbursement and customer travel.

We should aim to reduce low-value operations as much as possible. For example, for expense reimbursement, you can simplify the procedure with a dedicated application, automate it with RPA, and eliminate travel time with web conferencing.

2 Efficiency

Even though they create the same value, it takes different amounts of time depending on the people who work faster or those who work slower. Therefore, after sorting out value creation and non-creation, the next step is to seek efficiency, in other words, to reduce the time to create value keeping the same value created.

When analyzing efficiency in task mining, it is necessary to set a reference value. In short, even if we do the same work, we can’t judge whether the work is highly efficient without setting some kind of evaluation criteria.

In general, this standard value is based on the average processing time by department or job category. The good thing is, unlike interview-based business analysis, task mining can be analyzed based on the actual “PC operation time”.

3 Task to be improved

The third analytical perspective of task mining will be the discovery of improvement potential tasks. While the previous two items (created value and efficiency) focus on business processing time, the improvement potential task focuses on the flow of work.

Firstly, we find and extract the tasks that we think could be improved somehow. The main targets for extraction are “routine patterns”, “multiple mistakes” and “repetition”.

A “routine pattern” is one in which several steps are taken in sequence. Day-off requests and business travel settlements are typical routine patterns. These procedures are often systematized into business systems, so they can be analyzed by process mining, but even if they are not systematized into business systems, they can be discovered by task mining. The “multiple mistakes” or “repetitions” are outliers found in the flow of app and file operations, many of which involve a large amount of “copy and paste”.

Although specific improvement measures for these potential improvement tasks may occur on a case-by-case basis, automation with RPA is the most likely solution.

Above, we have explained that in task mining, the analysis is carried out from the three perspectives of “created value,” “efficiency,” and “task to be improved”.

Task mining can also do other things, such as finding non-compliance processes that are related to compliance, but this is less relevant to improving labor productivity and will be discussed at another time.

RPD – Robotic Process Discovery – ロボティック・プロセス・ディスカバリとは?

robot working on pc

What is RPD – Robotic Process Discovery?
English follows Japanese. Before proofread.

ロボティック・プロセス・ディスカバリ(以下、RPD)は、基本的には「タスクマイニング」と同義です。すなわち、ユーザーが自らのPC上で、エクセル、パワーポイントやブラウザーなどのアプリケーションやファイルを操作した履歴である「PC操作ログ」を収集し、分析対象とします。

「タスクマイニング」は、米ITアドバイザリ企業Gartnerが、『Gartner, Market Guide for Process Mining, Marc Kerremans, 17 Jun 2019』において初めて提唱した表現です。すでに、世界各国、また日本でも、「タスクマイニング」は、PC操作ログに基づく「業務可視化」のソリューション全般を含む一般名称として認知されつつあります。

一方、RPDは、2018年に、Marlon Dumas(Tartu大学教授)、Marcello La Rosa(Melbourne大学教授)らがPC操作ログ分析の研究を通じて、ひとつの方法論として提唱したものです。

タスクマイニングの場合、PC操作ログの分析という大きな枠組みを意味するだけですが、RPDでは、主に「RPAによるタスクの自動化」を目的とした、PC操作ログの基本的な分析手順が示されています。

以下、RPDではどのような手順でPC操作ログの分析を進めるのか、概要をご紹介します。原典は末尾に示しています。私の独自の理解で多少簡略化している点をあらかじめご了承ください。

なお、上記研究者たちは、最近、RPD(Robotic Process Discovery)ではなく、RPM(Robotic Process Mining)と呼び始めているようですが、当記事ではRPDでいきます。


1 PC操作ログの収集・蓄積

分析対象となるユーザーが使用する各PCにインストールされた「センサー(Javascriptの軽いプログラム)」が、ユーザーのアプリ起動、ファイルオープン、キーボードの押下、マウスのクリックなどの詳細なアクティビティを感知し、所定のサーバに送信、PC操作ログとして蓄積します。

なお、センサーが捕捉する詳細なアクティビティは、これ以上分解できない最小単位のものであるため、「アトミック・アクティビティ(原子的アクティビティ)」と言います。


2 データの抽出・ノイズフィルタリング

PC操作ログは、アトミック・アクティビティ(原子的アクティビティ)と呼ばれるように非常に詳細なものです。しかも、ユーザーの誤操作による修正アクティビティなど、分析対象とはなりえないノイズが大量に含まれています。

したがって、任意の条件(分析対象期間や分析対象PCなど)に基づいてPC操作ログデータを抽出したら、まずノイズを除去(フィルタリング)する作業を行う必要があります。また、同じアプリなのに記録されたデータ上の表記が若干異なっていると、異なるアプリとして処理されてしまうため、表記を統一したり、また文字化けを修正したりと、ノイズ除去以外に様々なデータ加工を行います。この作業は一般に「データ前処理(Data Preparetion)」と呼ばれています。


3 タスクセグメンテーション

RPDでの「セグメンテーション」は、PC操作ログの中から、なんらか一定の手順を踏んでいると想定されるひとまとまりのタスクを切り分けることを意味します。例えば、「ブラウザー画面に表示されている情報をコピーして、エクセルファイルにペーストする」、といった、なんらかの目的遂行のために連続したタスク、いわゆる「定型業務に関わるタスク」を抽出する作業がセグメンテーションです。

あらかじめ業務手順が作り込まれた業務システム(調達システムなど)と異なり、PC操作はユーザーの自由度が高く、PC操作ログはぱっと見、きままに様々なアプリやファイルを移動しているだけに見え、業務手順がはっきりしません。

そこで、ひとまとまりのタスクに関わるデータにのみをPC操作ログから切り出す、すなわち「タスクセグメンテーション」を行う必要があるわけです。


4 タスクシンプリフィケーション

セグメンテーションによって抽出された、データ転記のようなタスクにもまだ多少のノイズが含まれています。多くはユーザーの誤操作や、他のアプリでの並行操作などによるものですが、これらのノイズを除去してあげると、PC操作単位での手順が明確に把握できます。前述の例ですと次のような明確な手順がわかるフローが明らかになります。

エクセルファイルオープン(エクセル)⇒データ表示画面アクセス(ブラウザ)⇒データコピー(ブラウザ)⇒ペースト(エクセル)⇒データ表示画面アクセス(ブラウザ)⇒データコピー(ブラウザ)⇒ペースト(エクセル)・・・・

このように手順が明確に把握できるようにする仕上げ作業を「タスクシンプリフィケーション」と呼びます。


5 自動化候補タスク特定

分析対象としたPC操作ログデータからは、タスクセグメンテーションによって複数のタスクが切り出され、またタスクシンプリフィケーションによって、それぞれのタスクの流れを明確に把握することができました。

そこで、次には、これらのタスクのうち、どのタスクがRPAによる自動化に適しているか、また相応の効果を出せそうかを検討します。この段階では、候補タスクを実際に行っている現場の担当者にも詳しくヒアリングすることが望ましいでしょう。(現実には、タスクセグメンテーション、タスクシンプリフィケーションの段階でも、現場担当者の協力が得られると迅速に行うことができます)


6 自動化可能な手順発見

ここは、RPAによる自動化の範囲を決定する段階になります。前項で自動化に向いていると判明したタスクは、必ずしも初めから終わりまですべて自動化できるとは限りません。

そこで、さらに、自動化可能な手順を絞り込んでいきます。たとえば、前項で特定した自動化候補タスクの手順が、[A⇒B⇒C⇒D⇒E⇒F]だったとして、自動化するのは、[C⇒D⇒E⇒F]のみ(A⇒Bは現行のまま)、というような形での絞り込みになります。


7 自動化手順の仕様作成

自動化可能な手順が絞り込めたら、任意のRPAツールでタスクを自動実行させるための要求仕様を検討し、次項のプログラミングのための「基本設計書」を作成します。


8 RPAプログラミング

ここはRPAツール上での作業です。実際の自動化手順を組んでいきます。実際の環境でテストし、問題なく動くことが検証できたらRPAロボットの稼働開始です。

RPD – Robotic Process Discoveryの基本フロー

Basic flow of Robotic Process Discovery

以上、言葉で説明するだけではなかなかイメージが湧かないかもしれませんが、RPDのおおまかな手順をご説明いたしました。

RPDにせよ、タスクマイニングにせよ、個々のユーザーのPC操作単位での業務可視化を通じ、生産性向上を主な目的として、各種改善施策を展開することが主眼。具体的な改善施策は様々ですが、RPDは、特に、「タスク自動化」を基本目的とした分析手法であることをご理解いただければと思います。

また、RPD、またはタスクマイニングは、複数の部門をまたがる業務プロセスを可視化する「プロセスマイニング」と組み合わせて活用するときに最大の効果を発揮する点を強調しておきます。

[参考文献]

Robotic Process Mining: Vision and Challenges
Volodymyr Leno, Artem Polyvyanyy, Marlon Dumas, Marcello La
Rosa, Fabrizio Maria Maggi

Discovering Automatable Routines From User Interaction Logs
Antonio Bosco, Adriano Augusto, Marlon Dumas, Marcello La Rosa, and
Giancarlo Fortino

AI for Business Process Management From Process Mining to Automated Process Improvement
Marlon Dumas, University of Tartu Institute of Computer Science


What is RPD – Robotic Process Discovery?

Robotic Process Discovery (RPD) is essentially synonymous with “task mining”. That is, it collects and analyzes PC interaction Log, which is the history of the user’s operation of applications and files such as Excel, PowerPoint, and browsers on his or her own PC.

“Task mining” is an expression first proposed by US IT advisory firm Gartner in its report, “Gartner, Market Guide for Process Mining, Marc Kerremans, 17 Jun 2019”. The term “task mining” is already gaining fairly high recognition around the world and in Japan as a general name that includes all solutions for “business visualization” based on PC interaction logs.

“RPD”, on the other hand, is a methodology proposed by Marlon Dumas (Professor at Tartu University) and Marcello La Rosa (Professor at Melbourne University) in 2018 through their research on PC interaction log analysis.

In the case of task mining, it only connotes the big framework of PC interaction log analysis, but RPD shows the basic analysis procedure of PC interaction log mainly for the purpose of “automation of tasks by RPA”.

The following is an overview of how RPD proceeds to analyze the PC interaction log. The references are shown at the end.

Please note that this is a simplified version based on my original understanding. And it should also be noted that the above researchers have recently started to call it RPM (Robotic Process Mining) instead of RPD (Robotic Process Discovery), but I will use RPD in this article.

1 Collection and storage of PC interaction logs

The sensor (a light Javascript program) installed on each PC used by the user to be analyzed detects the user’s detailed activities such as launching applications, opening files, pressing the keyboard, clicking the mouse, etc., and sends the data to a designated server, where it is stored as a PC operation log.

The detailed activity captured by the sensor is called “atomic activity” because it is the smallest unit that cannot be decomposed any further.

2 Data Extraction and Noise Filtering

PC operation logs are very detailed, so called atomic activity. What’s more, there’s a lot of noise in there that can’t be analyzed, such as modified activities due to user error.

Therefore, after extracting PC interaction log data based on some conditions (target period, target PC, etc.), it is necessary to remove (filter) the noise first. In addition, if the notation on the recorded data is slightly different even though it is the same application, it will be processed as a different application, so we can unify the notation, correct garbled characters, and perform various data processing other than noise removal. This work is commonly referred to as “Data Preparation”.

3 Task Segmentation

In RPD, “segmentation” means to isolate a group of tasks from the PC operation log that are assumed to have followed a certain procedure. For example, “Copying and pasting information displayed on the browser screen into an Excel file” is a task to extract a series of tasks to accomplish some purpose, so-called “routine tasks”.

Unlike business systems (e.g., procurement systems) with pre-built business procedures, PC operation has a high degree of freedom for the user, and at a glance, PC operation logs look like they are just moving various applications and files at will, and business procedures are not clear.

Therefore, it is necessary to perform “task segmentation”, that is, to isolate only the data related to a single task from the PC operation log.

4 Task Simplification

The tasks extracted by the segmentation, such as data transcription, still contain some noise. Many of them are caused by user mistakes or parallel operation in other applications, but if you remove these noises, you can clearly understand the steps in each PC operation. The aforementioned example reveals a flow that reveals the following clear steps

Excel File Open (Excel) ⇒ Data Display Screen Access (Browser) ⇒ Data Copy (Browser) ⇒ Paste (Excel) ⇒ Data Display Screen Access (Browser) ⇒ Data Copy (Browser) ⇒ Paste (Excel)…

The finishing touches that make it possible to understand the procedure clearly are called “task simplification”.

5 Identification of candidate tasks which can be automated

From the PC interaction log data extracted for analysis, we were able to isolate multiple tasks through task segmentation and clearly understand the flow of each task through task simplification.

The next step is to consider which of these tasks are suitable for RPA automation and whether they are likely to produce a reasonable effect. At this stage, it is advisable to interview the person in charge in the field who is actually performing the candidate task in detail. (In reality, even the task segmentation and task-simplification stages can be done quickly with the help of field personnel.)

6 Automatable procedure discovery

This is the stage where the scope of automation with RPA is determined. The tasks identified in the previous section as being better suited for automation are not necessarily all automatable from beginning to end.

So, we will further narrow down the steps that can be automated. For example, if the procedure of the automation candidate task identified in the previous section is [A ⇒ B ⇒ C ⇒ D ⇒ E ⇒ F], then only [C ⇒ D ⇒ E ⇒ F] is to be automated (A ⇒ B remains the current one).

7 Create specifications for automation procedures

Once you have narrowed down the steps that can be automated, consider the requirements for the automatic execution of the task by any RPA tool and create a “basic design document” for the programming in the next section.

8 RPA programming

This is to be done on an RPA tool writing an actual automation procedure. After testing in the actual environment and verifying that it works without any problems, the RPA robot is ready to go live.


Although it may not be easy to get an image of the RPD just by explaining it in words, I have explained the general procedure of RPD.

Whateve you call it, RPD, RPM or task mining, the main focus is to develop various improvement measures with the main objective of improving productivity through visualization of operations at each PC. There are a variety of specific improvement measures, but we hope you understand that RPD is an analysis method with the basic purpose of “task automation” in particular.

It should also be emphasized that RPD, or task mining, is most effective when combined with “process mining”, which visualizes business processes across multiple departments.

[References]

Robotic Process Mining: Vision and Challenges
Volodymyr Leno, Artem Polyvyanyy, Marlon Dumas, Marcello La
Rosa, Fabrizio Maria Maggi

Discovering Automatable Routines From User Interaction Logs
Antonio Bosco, Adriano Augusto, Marlon Dumas, Marcello La Rosa, and
Giancarlo Fortino

AI for Business Process Management From Process Mining to Automated Process Improvement
Marlon Dumas, University of Tartu Institute of Computer Science


プロセスマイニング関連ツールの位置づけを整理整頓する!

work place analytics overview in english

Positioning of process mining-related tools from Workplace Analytics perspective
English follows Japanese. Before proofread.

「プロセスマイニング」は1990年代末に誕生し、昨年、20歳の誕生日を迎えたばかりの新しい分析手法ですが、2019年には新たに「タスクマイニング」という概念が登場しました。

当記事では、プロセスマイニング、タスクマイニングに、これらのソリューションと類似のソリューションである「SIEM:Security Information and Event Management」を含めて、狙いや位置づけの違いを整理整頓してみたいと思います。

まず、プロセスマイニングとタスクマイニングの違いについて。簡単に説明するなら、分析対象となるデータが異なります。

プロセスマイニングは、ERPやCRM、SFAなどの業務システムに記録・蓄積されたイベントログ(トランザクションデータ)を抽出したものが分析対象です。記録されているデータは、「購買申請」、「購買承認」など、システムの「送信」や「更新」ボタンを押下したタイミングの活動が基本で、業務の「節目(マイルストーン)」だけの粒度の粗いものです。

一方、タスクマイニングは、従業員が各自操作するPC上での詳細な操作、具体的には、アプリの起動、ファイルオープン、マウスクリックやコピー&ペーストなどが記録された「PC操作ログ」が分析対象となります。業務システムから抽出されたイベントログと比べると、これ以上分解できない「アトミック(原子的)」な詳細データであり、タスクレベルでの分析が可能です。なお、こうしたPC操作ログは、どこかに記録されているものではないため、分析対象となるPCに、センサー、あるいはエージェントと呼ばれるソフトをインストールして、能動的にPC操作をデータとして捕捉、収集サーバに蓄積する仕組みが必要となります。

プロセスマイニング、タスクマイニングに隣接した類似ソリューションに「SIEM」があります。これは、セキュリティ機器、ネットワーク機器、およびサーバに残されている各種ログを分析することで、サイバーアタック、データ漏洩などのセキュリティに関わる問題を発見する、また、IT機器の資産としての管理を行う、といったことが目的になります。

さて、これらのソリューションは、基本的に「職場(ワークプレイス)」で発生しているデータを分析することから、大きくは「ワークプレイスアナリティクス(Workplace Analytics)」という枠組みに入れることができるでしょう。

それでは、ワークプレイスアナリティクスの枠組みで、プロセスマイニング、タスクマイニング、SIEM、およびそれぞれのキーソリューションを位置付けてみましょう。(下図参照)

図の下部の両矢印あたりをご覧ください。プロセスマイニングは「プロセス改善志向」であり、一方、「SIEM」は、「リスク回避・管理志向」です。タスクマイニングその中間に位置しています。なぜなら、タスクマイニングでは従業員の日々の業務内容全体を把握できるため、勤怠管理にも活用できるからです。(プロセスマイニングは、業務システム上で行われた操作だけのデータが分析対象のため、一日の業務全体を把握することはできません)

また、プロセスマイニングとタスクマイニングは、「プロセスインテリジェンス」という枠組みで囲むことができますが、SIEMは、「プロセス」を分析対象とはしていないため、含まれません。

そして、プロセスマイニングは、企業全体のプロセス改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)の視点からのアプローチに有効であることから「DX志向」、一方、タスクマイニングは、最終的にはタスクレベルでの自動化であるRPAを目的とすることが多いため、「RPA志向」と言えるでしょう。

では、それぞれのカテゴリーのキーソリューションを見ていきましょう。現時点(2020年2月)において、日本のプロセスマイニング市場のキープレーヤーは、CelonoisとmyInvenioの2つ。両ツールとも豊富な機能と優れた操作性を備えたエンタープライズソリューションであり、大企業を中心に導入企業が増えています。そしてつい最近、両ツールとも「タスクマイニング機能」を追加しています。業務システムからのイベントログデータだけでなく、PC操作ログからのフローチャート(プロセスモデル)も作成可能とすることで、タスクレベルでの自動化を目指すRPA化に必要な分析ニーズに対応したものだと言えるでしょう。

タスクマイニングのカテゴリーでは、myInvenioの日本総代理店であるハートコアが、「Heartcore Task Mining」を提供。また、銀行業界を中心に導入実績のある「MeeCap」は、ERPなどからのイベントログも分析するプロセスマイニング機能へと拡張を始めています。

SIEMカテゴリーでは、Splunkや、Skysea Viewが知られていますが、SPlunkが、プロセスのフローチャート機能を追加してきています。ただし、イベントログを取り込んだ分析までは行えないようです。

以上、ワークプレイスアナリティクスの枠組みでプロセスマイニング、タスクマイニング、SIEMの目的や位置づけを整理整頓してみました。

職場の業務改革のための各種ソリューション比較検討の参考になれば幸いです。


“Process mining” was born in the late 1990s and last year turned 20 years old. In 2019, a new concept called “task mining” appeared.

In this article, I would like to organize and sort out the differences in purpose and positioning, including “SIEM: Security Information and Event Management”, which is a similar solution to process mining and task mining.

First, the difference between process mining and task mining. In simple terms, the data to be analyzed is different.

Process mining analyzes the event logs (transaction data) recorded and accumulated in business systems such as ERP, CRM, and SFA. The recorded data is based on activities such as “purchase request” and “purchase approval” when the “send” or “update” button of the system is pressed, and the granularity of only the “milestone” of the business Is a rough thing.

On the other hand, task mining analyzes the detailed operations on PCs that employees operate individually, specifically, the “PC operation log” that records application launches, file opens, mouse clicks, copy and paste, etc. Eligible. Compared to the event log extracted from the business system, it is “atomic” detailed data that cannot be further decomposed and can be analyzed at the task level. Since these PC operation logs are not recorded anywhere, install software called sensors or agents on the PC to be analyzed and actively capture and collect PC operations as data. A mechanism to accumulate on the server is required.

“SIEM” is a similar solution adjacent to process mining and task mining. It analyzes security logs, network devices, and various logs remaining on servers to find security-related issues such as cyber attacks and data leaks, and manages IT devices as assets. And so on.

Now, since these solutions basically analyze data generated in the “workplace”, they can be broadly put into the framework of “Workplace Analytics”.

Now let’s position process mining, task mining, SIEM, and their key solutions within the framework of workplace analytics. (See the figure below)

Look around the double arrow at the bottom of the figure. Process mining is “process improvement oriented”, while “SIEM” is “risk aversion and management oriented”. Task mining is located in the middle. This is because task mining can be used for attendance management because it allows you to understand the entire daily work of employees. (In process mining, since only the data of operations performed on the business system is the analysis target, it is not possible to grasp the entire business of the day.)

In addition, process mining and task mining can be surrounded by the framework of “process intelligence”, but SIEM is not included because “process” is not analyzed.

And process mining is “DX-driven” because it is effective for process reform of the entire company and approach from the viewpoint of digital transformation (DX), while task mining is ultimately an automation at the task level Because it is often aimed at a certain RPA, it can be said that it is “RPA-driven”.

Let’s look at the key solutions in each category. At this time (February 2020), two key players in the Japanese process mining market are Celonois and myInvenio. Both tools are enterprise solutions with rich functions and excellent operability, and the number of enterprises, especially large enterprises, is increasing. And recently, both tools have added a “task mining function”. By being able to create not only event log data from business systems, but also flow charts (process models) from PC operation logs, it can be said that it meets the analysis needs necessary for RPA to aim for task-level automation Will be.

In the task mining category, heartcore, myInvenio’s sole agent in Japan, provides Heartcore Task Mining. In addition, MeeCap, which has a track record of introduction in the banking industry, has begun to expand to a process mining function that analyzes event logs from ERP and other sources.

In the SIEM category, Splunk and Skysea View are known, but Splunk has added a process flowchart function. However, it seems that analysis cannot be performed until the event log is imported.