よくいただくご質問 – FAQ

プロセスマイニングに関していただくご質問について、標準的な回答を掲載しています。ここにない質問は、「お問い合わせフォーム」からお知らせください。随時、FAQページにて回答してまいります。


Q:プロセスマイニングに適した業種・業界はあるんでしょうか?

プロセスマイニングに特に適した業種や業界は基本的にありません。というのも、分析の対象は、業務システムから抽出したイベントログデータであり、なんらか、業務システムを利用していて、イベントログが蓄積されていれば、プロセスマイニングを適用することが可能だからです。

また、これまでのところ、プロセスマイニングの適用対象はバックオフィス、すなわち、管理部門や調達部門、物流部門などであり、これらの経営機能はほとんどの業種・業界の企業でも備えているものです。

したがって、プロセスマイニングを実践している、また導入を検討している企業の業種・業界は多岐にわたります。これまでの実績というところでは、HSPIが発行している調査資料「Process Mining: A DATABASE OF APPLICATIONS 2020 Edition」によると、航空、自動車、建設、物流、銀行、保険、医療・医薬などの業界での取り組みが先行しています。


Q:プロセスマイニングの対象となるプロセスにはどんなものがありますか?

これまで最も多く行われてきたプロセスは以下の2つです。

  • 調達プロセス P2P – Procure to Pay
  • 受注プロセス O2C – Order to Cash

調達プロセス、受注プロセスとも、企業活動において、収益を生み出すための根幹となるプロセスであり、社外のサプライヤ、あるいは顧客、および社内の複数の部門が関わる複雑なプロセスです。したがって、非効率な活動、ボトルネック箇所、逸脱手順など、改善の余地が大きく、かつ改善効果もダイレクトに収益に反映されます。

上記以外では、サプライチェーンマネジメントに関わる各種プロセスや、工場の生産に関わるプロセスなど、様々なプロセスへの適用が増えつつあります。

PoCや、本格導入初期のトライアルにおいては、より小規模なプロセスが分析対象とされることが多く、たとえば「買掛金管理(Account Payable)」や、「売掛金管理(Account Receivable)など経理部門主体のプロセスが対象となります。


Q:プロセスマイニングとBIはどう違うんですか?

「プロセスマイニングでできることは、BIでもできるんじゃないですか?」というご質問をしばしばいただきます。その答えは、「はい、かなりの部分はBIでも可能です」となります。

データを集計・分析し、グラフや表に展開する分析ツールとして、プロセスマイニングツールとBIの多くの機能は重複しています。実際、プロセスマイニングで行うデータ分析の8割方はBIツールでも実行可能です。

しかし、一般的なBIツールでは実行できない機能があります。それは、「プロセス発見」です。イベントログデータから、プロセスの流れを視覚的に把握することのできる「フローチャート(プロセスモデル)」を自動的に作成するためには、独特のアルゴリズムが必要です。

一般的なBIツールには、プロセス発見のためのアルゴリズムは搭載されていません。したがって、プロセスマイニングの核となる機能であるプロセス発見を実行したければ、プロセスマイニングツールを用いることが必須となります。

逆に、プロセスに関わるデータを様々な切り口で集計し、表示する機能についてはBIツールの方が得意なものもありますので、理想的には、プロセスのフローに関わる分析はプロセスマイニングツール、それ以外の集計はBIツールにデータを渡して行うという両者の組み合わせ、使い分けが良いと言えるでしょう。


Q:プロセスマイニングツールをどうやって選んだらいいでしょうか?

貴社のプロセスマイニングに取り組む目的、分析対象となるプロセス、抽出可能なイベントログデータの内容、および予算に応じて最適なツールを選定してください。

現在、世界には30以上のプロセスマイニングツールがあります。どのツールも、プロセスマイニングの基本機能である「プロセス発見」は備わっています。

しかし、それ以外の機能についてはツールによって機能の有無の違いがあります。また、日本語化されているのは現時点で数ツールのみです。

また、予算の視点では、有償の商用ツールだけでなく、オープンソースで無償のツールも存在します。ただし、プロセスマイニングは高度で複雑な分析手法であり、たとえ無償のツールだったとしても、使いこなせる人材が不可欠です。

したがって、プロセスマイニングツールの選定に当たっては、ツール自体の機能、価格だけでなく、ツールを十分に活用できるための様々な支援、すなわちプロフェッショナルサービスが併せて提供されているかどうかも重要なポイントとなります。


Q:プロセスマイニングを行うための予算はどの程度想定すればいいでしょうか。

プロセスマイニングの有効性検証のためのPoC(Proof of Concept)のプロジェクトの場合で総額500万円程度、本格導入に際しては、数千万円の予算が必要となります。

予算の内訳は、ざっくりプロセスマイニングツールの「ライセンス費用」と、データ前処理やツールの操作、分析結果の評価などの支援を受ける「プロフェッショナルサービス」の2つに分けられます。

ライセンス費用は、オープンソースであれば0円、高機能のものであれば年額1千万円前後です。ツールベンダーからの提案を受けてPoCを行う場合、有償ツールでもライセンス費用は請求されませんので、プロフェッショナルサービスに係る費用のみでおおよそ500万円程度となります。もちろん、500万円以下の予算でも対応してくれることがありますが、その場合は、プロジェクトの規模・期間を短縮し、業務負荷を軽減したプロジェクトになります。

プロフェッショナルサービスに係る費用は、端的には人件費です。データ前処理を行うデータサイエンティスト、ツールの操作を行うエキスパート、分析結果の評価を行うビジネスアナリストやプロセスコンサルタントなどの業務工数に応じて費用が発生します。

貴社にこうした人材が既にいらっしゃるのであれば、プロフェッショナルサービスは不要となりますのでライセンス費用のみ予算に計上すれば良いことになりますが、そうでない場合は、プロセスマイニングを実行するために必要なプロフェッショナルサービス、すなわち人的支援を受ける必要があります。

プロフェッショナルサービスを提供するデータサイエンティスト、ビジネスアナリスト、ビジネスコンサルタントは工数単価も高いことから、数百万円〜数千万円の予算を想定する必要があるでしょう。


Q:当社のシステムには、イベントログが蓄積されていないのですがプロセスマイニング分析は可能ですか?

プロセスマイニングはデータ分析の一種ですので、分析対象となるデータが入手可能であることが大前提となります。したがって、イベントログが蓄積されていない場合にはプロセスマイニングをそもそも実行できません。

しかし、現実には、プロセスマイニングの対象となりうるデータが存在している可能性はありますので、ITシステム担当者にぜひ確認してもらってください。

なお、データがないなら作ってしまおう、という逆転の発想もあります。たとえば、手書きの営業日報がきちんと作成されている会社の場合、初回訪問日、ニーズヒアリング日、初回提案日、見積もり提示日などをエクセルにデータとして入力すれば、立派なイベントログデータとしてプロセスマイニング分析が実行可能です。


Q:プロセスマイニングとタスクマイニングはどう違いますか?

プロセスマイニングとタスクマイニングの一番の違いは、分析対象とするデータです。

プロセスマイニングは、ERPやSFAなど、業務システム上で行われた業務に関して記録されたデータを抽出して分析します。購買プロセスであれば、「購買依頼作成」、「購買依頼承認」、「見積もり依頼」など、節目となる活動についてタイムスタンプとともに記録されたイベントログが分析対象です。

一方、タスクマイニングの分析対象は、PC操作ログデータになります。PC操作ログは、アプリ起動、ファイルオープン、文字入力、コピー&ペーストなど、タスクレベルの詳細なものになります。

タスクレベルの詳細なPC操作ログは、サーバ上の業務システムでは捕捉、記録していないため、PC操作ログを収集するためのエージェントソフトを分析多少となるPCにインストールし、収集・蓄積する必要があります。

まとめると、プロセスマイニングは、業務システムから抽出した粗めのデータ、タスクマイニングは、PC操作ログを収集・蓄積した詳細なデータをそれぞれ対象とするため、レイヤーの違いだとも言えます。すなわち、業務プロセスに関して、マクロ的なアプローチがプロセスマイニングであり、ミクロ的なアプローチがタスクマイニングです。

ただし、業務システムから抽出されたイベントログデータと、PC操作ログデータでは、取得できるデータ項目は異なるため、データ前処理の手順に違いがあります。端的に言えば、PC操作ログはノイズも多く、プロセスマイニングに必須のデータ項目がそのままでは含まれていないため、データ前処理においてかなりの業務負荷があることは指摘しておかなければなりません。


Q:プロセスマイニングとBPMとの関係は?

BPM(Business Process Management) すなわち「ビジネスプロセスマネジメント」は、文字通り、ビジネスプロセス、ひらたくいえば「業務の手順、流れ」を適切にコントロールすることであり、その基本目的は、収益の拡大、コスト削減、顧客満足度向上などを通じて事業の継続的運営、成長を目指す取り組みです。

プロセスマイニングとの関係については、BPMの3つの視点、「プロセス開発」、「プロセス運営」、「プロセス変革」のそれぞれにおいて、プロセスマイニングがどのように活用できるかをご説明しましょう。

プロセス開発 – Process development

新しい事業を開始する時、自社製品・サービスをどのように顧客に届けるか、また製品・サービスを調達するための購買活動をどのように行うか、などの視点から、様々な業務プロセスを設計し、業務手順をマニュアル化したり、運営体制を確立したり、ITシステムの開発に取り組む必要があります。これがプロセス開発です。

プロセスマイニングは、現行の業務プロセスの操作履歴であるイベントログ(トランザクションデータ)に基づく業務プロセスの可視化ですので、プロセスをゼロから開発することにはあまり役に立ちません。

ただ、シミュレーション機能は活用可能です。ひとまず開発したプロセスをBPMN準拠のフローチャートとして記述、プロセスマイニングにアップロード後、各プロセスの所要時間や待ち時間などについて推定時間を設定し、一定期間内での想定発生件数を入力すれば、開発したプロセスによって案件が円滑に処理されるか、ボトルネックが発生しないかを検証し、現場に展開する前にプロセスの改善を行うことができます。

プロセス運営 – Process operation

業務プロセスの開発が完了したら、プロセス運営段階です。円滑に製品・サービスが提供されているか、購買活動が適切に行われ、原材料不足などによって欠品が生じていないかなど、プロセス運営状況は継続的に監視(モニタリング)を行うことが求められます。

プロセスの運営段階では、プロセスマイニングの「運用サポート」による強力な支援が期待できます。業務の遂行状況についてのイベントログをリアルタイムでプロセスマイニングに投入することで、未完了の案件についての非効率やボトルネックなどの問題を速やかに発生し、是正することでコスト肥大化の防止や顧客満足度の低下を未然に防ぐことが可能となります。

プロセス変革 – Process change

プロセスを運営する中で生じている非効率な箇所、業務が滞留しているボトルネックなどの問題はできるだけ速やかに解決する必要があります。場合によっては業務手順を大きく変更する必要があるでしょう。

プロセス変革のフェーズは、プロセスマイニングの基本的な機能が最も有効となります。すなわち、イベントログデータから「現行プロセス(as isプロセス」を可視化し、さらに、理想プロセス(to beプロセス)との比較分析(適合性検査)によって問題・課題を特定し、全体的な視点からプロセス改善に取り組むことが可能となります。


Q:プロセスモデリングとプロセスマイニングはどう違いますか?

プロセスモデリングは、業務プロセスの手順や担当者などの情報をフローチャートの形で作成することです。多くの場合、モデリングツールを用いて、国際標準となっているBPMN準拠の表記法で作成します。モデリング作業は基本、手作業で行うものであり、モデリングツールを利用せず、パワーポイントでのフロー図作成も、プロセスモデリングと呼ぶことができるでしょう。

一方、プロセスマイニングは、ITシステムから抽出したイベントログデータに基づいて自動的に業務プロセスのフローチャートを生成することが基本機能です。結果として業務プロセスを示すフローチャートを生み出すという点では、プロセスモデリングと同じですので、プロセスモデリングとは、「自動化されたプロセスモデリング」と考えてもいいでしょう。

プロセスマイニングの実運用においては、イベントログから自動的に作成されたフローチャートをBPMN形式に変換してモデリングツールに取り込み、必要な追加・削除、修正を行い、改善された業務プロセスを設計します。

あるいは、モデリングツールによって、本来のあるべきプロセス(to beプロセス)をモデリングし、そのデータをプロセスマイニングツールにアップロードすることで、イベントログからの現状プロセス(as isプロセス)との比較分析、すなわち適合性検査(Conformance Checking)を行います。


Q:プロセスマイニングに取り組む期間はどの程度必要でしょうか?

プロセスマイニングをプロジェクトとして捉える場合は、シンプルなサンプルデータでの検証であれば数週間、プロセスマイニングの有用性をしっかり検証するためのPoC(Proof of Concept)、あるいはPoV(Proof of Value)であれば、データの抽出からレポート作成までで2カ月~3カ月といったところです。

プロセスマイニングを本格導入する場合、まずはパイロットプログラムとして、データの抽出、前処理、分析、問題点の特定、根本原因分析、解決策の検討、展開という本来の目的である「業務プロセス改善」のサイクルを一回しするために、最短でも半年程度のスケジュールを組む必要があるでしょう。

プロセスマイニングは1回分析して終わりではなく、分析結果に基づいて改善されたプロセスが所定の成果を上げているかの効果検証、および、逸脱、ボトルネック等の新たな問題が発生していないか、継続的なモニタリングを行うことが望ましく、この段階では通年での運用を行うことになります。