プロセスマイニング事例:Siemens Healthineers – マシンログ(CTスキャナー)分析

Process Mining Case: Siemens Healthineers – CT Scanner data analysis

Siemens Healthineer(以下、SHS)は従業員数3万人超、医療機器のCTスキャナー(コンピュータ断層撮影)のグローバルマーケットリーダーです。CTスキャナーのグローバル市場シェアは33%以上、年率10%の成長率を続けています。

現在世界で29,000台のCTが稼働しています。CTを動かすためのソフトウェアは3つのプラットフォーム上で開発されており、合計31システム、バリエーションは74あるため、設定条件は最大3000パターンに上っています。

さて、稼働中の29,000台のCTのうち、最大14,000台については日々の稼働データがXMLファイル形式で送信されており、蓄積されるデータ量は50G/日です。このビッグデータはBIの「Qlik」で集計され、様々な文政ダッシュボードが作成されて社内で利用されています。

同社が、CTスキャナーのイベントログデータに対するプロセスマイニングに取り組んだ背景には、BIによって、CTがどう(WHAT)稼働しているかのスナップショットは十分分析できているが、どのように(HOW)稼働しているかを把握したいという動機がありました。

CTスキャナーにおける作業プロセスは大きくは以下の流れです。

1 患者を登録(Register Patient)

2 プロトコールのアップロード(Load Protocol)

3 患者位置確定(Confirm Position)

4 走査位相のアップロードと読み込み(Load Topo)

5 走査開始(Scan)

6 再構成(Reconstruct)

7 終了(Close)

上記のログデータはマシンログとして記録されており、同社ではSQLサーバに蓄積しています。このマシンログを抽出、整備してプロセスマイニング分析を実行しています。

SHSで採用しているプロセスマイニングツールは、「MEHRWERK Process Mining(以下、MPM)」です。同社がMPMを採用した最大の理由は、MPMはQlikのプラグインとして提供されており、既に社内で活用されているQlikと一体的に利用することが可能だったからとのこと。

プロセスマイニングを通じて、CTスキャナーが現場でどのように(HOW)利用されているかが明らかとなり、様々な改善ポイントも見えてきました。

例えば、走査時間が徐々に遅くなってきており、CTスキャナーの一人の患者当たりのスループット(総利用時間)が長くなる傾向がデータから明確になりました。これは、アルゴリズムのパラメターの設定方法の見直しや、ソフトウェアにおけるなんらかの改善が必要なことを示唆します。

また、CTスキャナーの操作手順のバリエーションは、87,000以上に上ることがわかり、手順の標準化を推進すべきであることも判明しました。プロセスマイニングではこうしたバリエーションを詳細に検証可能であり、標準化を行う助けとなります。

また、地域(例えば、中国と米国)間の操作方法の比較分析なども行うことで、同社CT製品の改善に取り組んでいます。