根本原因追求のための2つの手法

Two approaches to dig into the root-causes of a process.

新しいITツールが登場すると、多くの人は過大な期待を抱きがちですが、プロセスマイニングに対してもまた、夢のような万能ツールと思い込む方がいらっしゃるようです。

プロセスマイニングは分析手法に過ぎず、また分析を通じて手にするものは、ありのままの現状であり、その現状から見えてくる現象としての問題点のみです。

具体的にお話しすると、分析対象となるプロセスに関わるイベントログを抽出し、プロセスマイニングツールで分析することにより、事実ベースでの現状プロセス(as isプロセス)がフローチャートとして可視化されます。

そして、プロセスの各手順となるアクティビティの処理回数や処理時間、待ち時間などが算出されることから、プロセスのどこの業務量負荷が高くなっているか、どこに時間がかかりすぎているか、どこにボトルネックがあるか、という問題の所在を特定できます。

しかし、なぜそのような問題が発生しているかという原因はデータの中にはありません。さらに分析を進めて、ある担当者の業務においてボトルネックが発生しやすい、といった形で問題の発生源を絞り込んでいくことまではできますが、相変わらず「原因」が明らかになるわけではないのです。

そもそも、何らかの問題が発生しているとき、それはかなり根深いところに原因があったり、また複合的な原因によることも多く、問題と原因が一対一で結び付くとは限らないのです。

したがって、プロセスマイニングによる分析を進めるうえでもっとも重要でかつ難度が高いのが「根本原因分析」です。なぜ最も重要かと言うと、プロセスの改善は対処療法ではなく、根本原因を解消することが最も効果的であるからです。

たとえば、顧客対応プロセスにおいてボトルネックが発生しており、対応の遅れにより顧客満足度が下がっているとして、ボトルネック解消のために、単純にスタッフを増員すればいいでしょうか。スタッフ増員によってボトルネックは一時的に解消できたとしても、コスト増をもたらし、業績的には利益低下につながってしまうのです。

しかし、もし、根本原因を突き止めることができ、スタッフ増員なしでボトルネックが解消できたとしたらどうでしょう。顧客満足度が改善されると同時に、利益を圧迫することもありません。

とういわけで、プロセスマイニングにおいては、「根本原因分析」に一番力を入れるべきなのですが、当記事では数十年前から知られる根本原因分析に役立つ2つの枠組みをご紹介しましょう。業務分析やビジネスコンサルティング手法を学ばれたことがある方にとってはお馴染みだと思います。

1 5Why分析

問題がある場合に、「なぜ、そうなっているの」という問いを5回繰り返していく方法です。これはトヨタ流の問題解決法としてよく知られています。5Whyだからといって、必ず5回繰り返さなければならないというものではなく、3回のなぜで根本原因=「真因」にたどり着くこともあるでしょうし、逆に7回繰り返さないとたどりつけないほど根深いところ真因がある場合もあるでしょう。「なぜなぜ分析」と呼ぶ方もいらっしゃいます。

2 フィッシュボーン分析

フィッシュボーン分析は原因の構造化を図る手法であり、見た目が魚の骨に似ていることからこのように呼ばれています。「特性要因図」や、日本の品質管理(QC:Quality Control)の父、石川馨氏が考案したことから「石川ダイヤグラム」とも呼ばれます。

フィッシュボーン分析は、QC7つ道具のひとつとしても知られており、特に、製造業の生産現場での品質管理のために利用されてきました。問題を起こしている原因が複数存在する場合に、原因を大きく分類していくことで構造化を図り、問題解決のためにどこからどのように改善施策を打てばいいかを検討するために有効です。