はじめに – プロセスマイニング活用入門

Preface – Process Mining in Practice – Business Process Improvement with fact-based process discovery and BPM perspective

なぜ、プロセスマイニングがビジネスプロセス改善・改革手法として有効なのか?

プロセスマイニングは1999年、オランダのアイントホーヘン工科大学(Eindhoven University of Technology)において研究が開始された、「ビジネスプロセス」を“見える化”(可視化)する分析手法です。

プロセスマイニングは、ビジネスプロセスを把握するために従来行われてきた現場担当者へのインタビュー(ヒアリング)や、ワークショップ、観察調査と異なり、業務システムのDBに記録されているトランザクションデータ(イベントログ)を分析対象とする分析手法です。

プロセスマイニングのために開発された専用ツールでは、ビジネスプロセスの手順を自動的にフローチャート化してくれる「プロセス発見機能」をベースに、さまざまな分析機能が拡張されてきています。

プロセスマイニングを活用することによって、企業(組織)は、ビジネスプロセスの現状(as is)を把握できます。そして、プロセスにひそむ非効率な手順や業務が滞留しているボトルネックの発見が可能です。そして、あるべき姿(to be)へと現状ビジネスプロセスを改善していくことができます。

プロセスマイニングは業務システム操作記録であり、ほぼ全データを分析することから、現実のビジネスプロセスを忠実に再現できる点が最大のメリットであり、ビジネスプロセス改善・改革におおいに役立つと期待されています。

さらに、このところプロセスマイニングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために必須のソリューションだと言われるようになってきました。なぜなら、DXを推進することが確実な経営成果に結びついているかどうかをデータに基づくファクトベースで検証が可能だからです。しかも、改善後も、新たに生まれてくる問題点を迅速に発見してその解消に取り組むサイクルを回し続けること、すなわち「継続的プロセス改善」をプロセスマイニングは容易にするからです。

DXの一環として「RPA(Robotic Process Automation)」を導入する場合も、やみくもに自動化を図るのではなく、プロセスマイニング分析によりビジネスプロセス全体の可視化を図ることで、その中でRPA適用が最適と考えられる箇所を的確に見出すことができます。RPA自動化の費用対効果をプロセスマイニングの活用によって最大限に高めることができるというわけです。

本書は、ビジネスパーソン全般の幅広い層を想定しており、学術的な議論や、難しい数式などは他の専門書に譲っています。プロセスマイニングはまだよく知らないという方も念頭に置き、ビジネスの現場で役立つ実践的な知識・スキルとしてプロセスマイニングを平易に解説しています。

プロセスマイニングは、業務の履歴が何らかのデータとして取得できるのであれば、購買、受注、サービスはじめ、あらゆる部署のさまざまなプロセスが分析可能です。ですから、プロセス改善・改革に取り組みたいすべてのビジネスパーソンにお役に立てると思います。

また、管理・経営層の方には、プロセスマイニングを自社の日常業務の欠かせない要素として定着させるために、どのような取り組みが必要かを考えるヒントにもなりえるでしょう。

プロセスマイニングは最新のテクノロジーを活用するものではありますが、実のところ、TQC(Total Quality Control)をはじめ、日本の伝統的なビジネスプロセス改善の取り組みと組み合わせることによって最大のリターンを得ることができるということを本書を通じてご理解いただければ著者としてこれに勝る喜びはありません。

なお、プロセスマイニングの入門eラーニングコースをUdemyで提供しています。ご興味あれば、本書と併せてぜひご受講ください。

プロセスマイニング実践入門 – Introduction to Process Mining in Practice