プロセスマイニング入門(9)4つの基本アプローチ

Introduction to Process Mining (8)Four Basic Approaches

今回は、プロセスマイニングをプロセス改善に活用するための4つの基本アプローチについて概要をお伝えします。次回以降で、各アプローチを個別に取り上げて詳しく解説します。

1 プロセス発見 - Process Discovery

プロセス発見は、プロセスマイニングの土台となる手法です。プロセス発見をベースに適合性検査、プロセス強化、運用サポートが行われます。

プロセス発見とは、ITシステムから抽出したイベントログに基づいて、一定のアルゴリズムによって、対象プロセスをプロセスモデル、すなわち業務の流れを表すフローチャートを再現します。このプロセスモデルは、実際のシステム操作履歴を反映したものですので、「現行プロセスモデル(as is プロセスモデル)」と呼ばれます。

再現されたプロセスモデルは、大きくは2つの切り口、すなわち「頻度(処理件数)」、「時間(処理時間)」での分析を行います。

頻度分析を通じて、例えば、対象プロセスのどの箇所で処理件数が多いか=作業負荷が大きいかを把握することができます。作業負荷が大きい箇所はしばしば処理が追い付かず、ミス多発による繰り返しや業務の滞留=ボトルネックが生じやすいところです。

また、時間分析では、実際に対象プロセスの個々の工程でどの程度の処理時間を要しているかを把握します。KPI目標値に照らして想定以上の時間が掛かっている場合、それは生産性が低いことになります。また、前の工程から次の工程に移る間の時間は「待ち時間」であり、この待ち時間が想定よりも長い場合、業務が滞留する「ボトルネック」であるということが明確です。

2 適合性検査 - Conformance Checking

適合性検査という呼び方はちょっと固い表現ですが、文字通り、手本となるプロセスと現状のプロセスを比較して、現状がどの程度お手本に適合しているかを分析するアプローチです。

ここで手本となるプロセスは「参照プロセスモデル」や「規範プロセスモデル」とも呼ばれます。要するに、あるべき「理想プロセスモデル(to beプロセスモデル)」です。一方、イベントログに基づくプロセスは「現状プロセスモデル(as isプロセスモデル)」です。

適合性検査は、理想プロセスを「正」として、現状プロセスがどのように乖離、逸脱しているかを明らかにします。具体的には、理想プロセスには含まれていない手順を現状プロセスでは行っている場合(やってはいけない手順実行)や、逆に、理想プロセスに含まれている手順が、現状プロセスでは実行されていない場合(やるべき手順の不実行)などです。

3 プロセス強化 - Process Enhancement

プロセス強化は、前項の「プロセス発見」や、「適合性検査」の分析結果を踏まえて、非効率なプロセス、ボトルネックを特定し、有効な改善施策を検討し、より優れたプロセスを設計・開発するアプローチです。

プロセスマイニングツールでは、不要と思われる手順をカットしたり、業務手順を組み替えたり、ボトルネックを解消するために要因配置を変更したり、またRPAによる自動化を行った場合にどの程度の改善が期待できるかをシミュレーションできる機能が備わっているものがあります。

シミュレーションを行うことにより、プロセス強化のための優れた改善施策はどのようなものになるかを事前に検証したうえで展開できます。

4 運用サポート - Operational Support

従来、プロセスマイニングの分析対象は、過去の完了したイベントログでした。運用サポートでは、現在仕掛中のプロセス、すなわち未完了の案件に係るイベントログをほぼリアルタイムでプロセスマイニングツールに流し込み分析を行います。

そして、今まさに運用中の処理プロセスにおいて非効率、ボトルネックの箇所や逸脱を発見、あるいは予測し、担当者にメールやチャットなどでアラートを出すことで、問題の芽を早めに摘み取ったり、問題発生を未然に防ぎます。

運用サポートでは、予測分析などの高度な分析が行われるためAI(人工知能)も組み込まれており、現在最も最先端のアプローチと言えるでしょう。

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