プロセスマイニング入門(5)プロセスマイニングの適用対象・範囲

Introduction to Process Mining (5) Application areas of Process Mining

今回は、プロセスマイニングによる分析が可能な適用対象について、いくつかの視点で解説します。

システム・テクノロジー視点

まず、システムやテクノロジーの視点でプロセスマイニングの分析が可能なものについて概説します。

プロセスマイニングは1999年に研究がスタートしました。もともと、ビジネスプロセスマネジメント、ワークフローといった業務プロセスの可視化を目的として始まった分析手法ですので、分析対象となったのは企業の基幹システムである「ERP」です。こうしたシステムは取引履歴がDBに詳細に記録・保持されています(「大福帳型DB」とも言います)。

取引履歴、すなわちトランザクションデータには、業務システムの操作の節目となるアクティビティ、タイムスタンプ、そして案件IDが基本的に含まれており、プロセスマイニング分析が容易に行えるデータだと言えます。

また、ERPと並んで、CRM(SFA含む)システムから抽出される業務システム操作ログは営業管理、顧客管理に関わるデータであり、プロセスマイニングの分析対象として有効です。

もちろん、個々の企業が独自開発したレガシーシステムについても、それがどんなコンピュータ言語で開発されていようとも、「業務システム操作ログ」が記録・保持されていればプロセスマイニングでの分析が可能となります。(多くの場合、レガシーシステムでも業務システム操作ログ、あるいはトランザクションデータはなんらかの形で記録されています。)

また、コールセンターでの顧客からの問い合わせの対応履歴を管理するCTI(Computer Telephony Integration)や、ITヘルプデスクのためのシステムからは、問い合わせ対応や、チケット対応履歴データが抽出できます。この、いわゆる「コミュニケーションログ」も、プロセスマイニングではしばしば分析されます。迅速な解決のための対応プロセスの改善により、顧客満足の向上を目指すことが主な目的です。

Webサイトの訪問履歴、すなわち「Webアクセスログ」も、訪問者のセッションID(Cookieも可)、訪問したページ(=アクティビティ)、タイムスタンプの3つの必須データ項目が含まれており、Web上での顧客の振る舞いを分析するためにプロセスマイニングが採用されます。顧客の行動をプロセスマイニング分析することは「カスタマージャーニーマイニング」と呼ばれています。

さて、意外な分析対象なのが、「機器操作ログ」です。「マシンログ」とも言いますが、これまでしばしば分析されているのが医療機器、具体的にはCTやMRIといったものです。分析目的は、稼働率の向上や適切に利用されているか、といったものです。

また、近年、IOT(Internet Of Things)が注目され、あらゆる場所にセンサーが設置されることで、センサーが捕捉したログが大量に発生しています。センサー捕捉ログはデータ量が大きく、ノイズが大量に存在しますが、適切にデータ前処理を行うことでプロセスマイニングを実行できます。

最後は、エクセルやブラウザーの詳細な操作履歴を収集したPC操作ログです。PC操作ログは、業務システム内に保存されているイベントログと異なり、分析対象PCに操作内容を収集するエージェントをインストールして能動的に蓄積する必要があります。PC操作ログは、タスクレベルの業務内容の見える化が可能であることから、「タスクマイニング」と呼ばれます。このPC操作ログはIOT同様、データ量が膨大でノイズが多く含まれますが、データ前処理を行うことでプロセスマイニングツールでの分析が可能です。

application system view process mining

バリューチェーン視点

下図は、企業活動を価値を生み出し、顧客に提供する仕組みとして構造化してもので「バリューチェーン」と呼ばれています。ここでは、バリューチェーンの視点でプロセスマイニングの分析対象を考えてみましょう。

様々な企業活動において、収益を得て事業を継続する「価値創出プロセス」は、

購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→アフターサービス

の流れです。この価値創出プロセスの多くは現在、ERPや、CRM(SFA)などの業務システム、またSaaS型の各種アプリケーションで遂行されるようになってきており、どの段階においても、プロセスマイニング分析による継続的改善が行われるようになってきました。

また、この価値創出を支えるさまざまな機能、すなわち調達活動、技術開発、人事労務管理、全般管理についても、システム化が進行している管理についてはプロセスマイニングが採用されるケースが増えてきています。

例えば、人事労務管理の領域になりますが、新規採用人材の受け入れプロセスである「オンボーディング」を効果的、効率的に行うための改善を目的としてプロセスマイニングが採用されています。

application value chain view process mining

分析対象となることの多い業務プロセス

最後に、これまでプロセスマイニングの分析対象となることの多かった業務プロセスをご紹介します。

まず、「受注(O2C)プロセス」、「購買(P2P)プロセス」は非常に多く分析されています。バリューチェーンの枠組みでは、まさに価値創出プロセスの根幹にある最も重要な業務だからでしょう。欧米では特に、ERP上で実行されることの多い業務プロセスであり、データの抽出、前処理の手順がある程度標準化できることも、分析対象とされることの多い理由です。

また、受注プロセスに含まれますが、倉庫などで、顧客からの発注を受けて在庫を割り当て、出荷を行うまでのプロセスが分析されることも多くなっています。

さらに、バリューチェーンの価値創出プロセスでは最下流にあたる「問い合わせ対応」やヘルプデスクも、手順がある程度定型化され、イベントログとしてシステムから抽出が容易なためプロセスマイニングが行われています。

経理部門に限定されるプロセスとして、「買掛金管理」、「売掛金管理」も、ERP上でほぼ完結し、分析が容易であることから、しばしば分析対象となります。

major application process mining